会社の建物への立入りを拒まれた場合にどうするか

会社の建物への立入りを拒まれた場合にどうするか

解任をめぐる争いの最中に、会社の建物への立入りを拒まれることがございます。立入りを強行することは、刑事上の問題を生じさせるおそれがあり、また後の主張の信用を損ないますので、避けなければなりません。本記事では、採るべき対応を順に整理いたします。

 結論 強行せず、記録を残して手続により対応します

対応の順序は、次のとおりです。

順序 内容
第1 立入りを強行しません
第2 拒まれた日時、場所、対応した者、態様を記録します
第3 職務を行う意思があることを、書面により会社に通知します
第4 私物及び必要な資料の返還を、書面により求めます
第5 取締役会の招集を請求し、記録を残します
第6 建物の権利関係を確認します

立入りが実現するかどうかよりも、拒まれた事実と、職務を行う意思を示した事実とを記録に残すことが、実務上は重要でございます。

 強行してはならない理由

正当な理由がないのに人の看守する建造物に侵入した者は、処罰の対象となり得ます(刑法第130条)。役員の地位を有していると考えていても、会社が管理する建物への立入りが常に正当化されるとは限りません。

また、扉又は錠を破損した場合には、別途の責任を問われるおそれがございます(刑法第261条)。会社に対する損害賠償の責任を負う余地もございます。

何よりも、実力による行動は、後の争いにおいて自らの立場を著しく損ないます。手続によることが基本でございます。

 記録の残し方

記録すべき事項 方法
日時及び場所 その場で書き留めます
対応した者の氏名及び所属 同上
拒まれた理由として述べられた内容 同上。可能であれば録音いたします
入館証又は鍵の取扱い 返還を求められた場合には、その事実を記録します
同行者の有無 第三者の立会いがあれば記録します

記録は、当日のうちに作成することが望まれます。後日にまとめて作成した記録は、信用性が低く評価される場合がございます。

 書面による通知

職務を行う意思があること、立入りを拒まれたことにより職務を行うことができないこと、及びこれにより会社に生じ得る不利益について、書面により通知いたします。配達の記録が残る方法により送付し、写しを保管してください。

役員の地位が残る限り、忠実義務を負い(会社法第355条)、任務を怠った場合の責任を問われる余地がございます。職務を行えない状態にあることを明らかにしておくことは、この点においても意味がございます。

 私物及び資料の返還

建物内に私物が残されている場合には、返還を書面により求めてください。会社の立会いの下で搬出する方法を提案することが、実務上は現実的でございます。

会社の資料については、権限なく持ち出すことがあってはなりません。必要な資料は、取締役としての立場又は株主としての立場に基づいて提示を求めることになります。取締役会議事録の閲覧等については、会社法に定めがございます(会社法第371条)。

 建物の権利関係の確認

建物が会社の所有である場合には、会社が管理の権限を有することになります。他方、建物が自らの所有である場合や、自らが賃借人となっている場合には、立場が異なります。

この場合、占有を侵奪されたものとして、占有回収の訴えにより返還及び損害の賠償を請求する余地がございます(民法第200条第1項)。占有を妨害された場合には、占有保持の訴えによることになります(民法第198条)。

まず登記事項証明書及び賃貸借契約書により、権利関係を確認してください。

 手続による対応

取締役会の招集を請求し、業務の状況の報告を議題とすることにより、会社の状況を把握する場を確保することが考えられます。招集権者に対して請求し、5日以内に一定の招集の通知が発せられないときは、自ら招集することができます(会社法第366条第2項・第3項)。

また、地位を争う場合には、地位の確認を求める訴えとともに、必要に応じて仮の地位を定める仮処分を検討することになります(民事保全法第23条第2項)。もっとも、保全の必要性の疎明が求められますので、認められるかは事案により異なります。

よくあるご質問

質問1 登記上はまだ役員です。それでも入れませんか。

登記上の地位と、建物の管理の権限とは別の問題でございます。実力による立入りは避けてください。

質問2 警察を呼んでもよいですか。

民事上の争いについて、警察が関与することは通常ございません。かえって事態を悪化させる場合がございます。

質問3 自分の車が会社の駐車場にあります。

返還を書面により求め、引取りの日時を協議してください。

質問4 会社の建物は自分の所有です。

権利関係が異なりますので、別途の検討が必要でございます。登記事項証明書及び賃貸借契約書を持参のうえご相談ください。

質問5 従業員に会えません。

従業員に対する一方的な働きかけは避けるべきでございます。連絡が必要な場合には、書面により会社を経由することが適切でございます。

 確認事項の一覧

確認事項 確認の方法
自らの登記上の地位 登記事項証明書
建物の所有者 登記事項証明書
賃貸借の当事者 賃貸借契約書
拒まれた事実の記録 当日の記録、録音
会社からの通知 書面、電子メール
建物内の私物 自らの記録

実力による行動を避け、記録を残すことが最善の対応でございます。ご相談は事前予約制です。

本記事における非開示事項について

拒まれた事実を後の主張に結び付ける方法、通知の書面の記載の程度、私物及び資料の返還を求める交渉の進め方、仮処分を検討すべき場面の見極めは、会社の状況及び権利関係により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
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  • ご相談は事前予約制です

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第330条(株式会社と役員との関係)、第355条(忠実義務)、第362条第2項(取締役会の職務)、第366条第2項・第3項(取締役会の招集の請求)、第371条(議事録の備置き及び閲覧等)、第908条第1項(登記の効力)、第915条第1項(変更の登記)

民法 第198条(占有保持の訴え)、第200条第1項(占有回収の訴え)、第601条(賃貸借)、第709条(不法行為による損害賠償)

刑法 第130条(住居侵入等)、第261条(器物損壊等)

民事保全法 第23条第2項(仮の地位を定める仮処分)

判例法理による部分 役員の職務の執行を妨げられた場合に採り得る手続の選択については、判例法理及び実務の運用によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。

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