解任された日から何か月以内に動くべきか

解任された日から何か月以内に動くべきか
最も短い期限は、解任の決議を争う訴えの3か月でございます。この期限は決議の日から進行し、伸長することができません。損害の賠償の請求については、これより長い期間が定められておりますが、資料の入手の可能性を考えれば、早期に着手することが望まれます。本記事では、期限を整理いたします。
結論 最も短い期限は3か月です
期限の一覧は、次のとおりです。
| 手続 | 期限 | 起算点 |
|---|---|---|
| 決議の取消しの訴え | 3か月(会社法第831条第1項) | 決議の日 |
| 決議の不存在又は無効の確認の訴え | 期間の制限はありません(会社法第830条) | — |
| 解任による損害の賠償の請求 | 債権の消滅時効の規定によります(民法第166条第1項) | 権利を行使することができることを知った時等 |
| 未払の報酬の請求 | 同上 | 各支払期 |
| 不法行為に基づく請求 | 民法第724条の定めによります | 損害及び加害者を知った時等 |
解任の事実を知るのが遅れた場合であっても、決議を争う訴えの期限は決議の日から進行いたします。まず決議の日を確定させることが必要でございます。
3か月の期限
条文の内容
株主総会の決議の取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければなりません(会社法第831条第1項)。この期間は、当事者の合意により伸長することができないものでございます。
招集の通知を受けていないこと、通知の期間が不足していたこと、議決権を有しない者が議決に加わったことなどは、いずれもこの訴えによって主張すべき事由でございます。
決議の日の確認
決議の日は、株主総会議事録及び登記事項証明書により確認することができます。会社は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければなりませんので(会社法第915条第1項)、登記により決議の日を知ることができるのが通例でございます。
解任の通知を受けた日ではなく、決議の日が基準となる点に留意が必要でございます。
期限を過ぎた場合
取消しの訴えを提起することはできなくなりますが、決議が存在しないこと又は無効であることを主張する余地は残ります(会社法第830条第1項・第2項)。もっとも、これらは瑕疵が著しい場合に限られますので、期限内に着手することが望まれます。
損害の賠償の請求の期限
解任について正当な理由がない場合の損害の賠償の請求(会社法第339条第2項)は、債権の消滅時効の規定の適用を受けます。債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅するものとされております(民法第166条第1項)。
したがって、決議を争う訴えの期限と比較すれば長期でございますが、資料の散逸を考えれば、速やかに着手することが望まれます。
時効の完成を猶予する方法
| 方法 | 効果 |
|---|---|
| 裁判上の請求 | 時効の完成が猶予されます(民法第147条第1項) |
| 催告 | その時から6か月を経過するまで完成が猶予されます(民法第150条第1項) |
| 協議を行う旨の合意 | 書面によりされたときは、一定の期間、完成が猶予されます(民法第151条第1項) |
催告による完成の猶予は、繰り返して用いることができないものと解されております。交渉が長期化する見込みがある場合には、協議を行う旨の合意を書面により交わすことを検討いたします。
資料の観点からみた着手の時期
法律上の期限とは別に、実務上は、資料の入手の可能性が着手の時期を左右いたします。退任の後は会社の資料に接することができなくなりますので、時の経過とともに立証が困難となります。
| 資料 | 入手の難易 |
|---|---|
| 株主総会議事録 | 株主であれば閲覧等を請求することができます |
| 取締役会議事録 | 株主が閲覧するには原則として裁判所の許可を要します |
| 給与明細及び源泉徴収票 | 手元にあるものは直ちに整理いたします |
| 役員退職慰労金の規程 | 在任中に写しを確保しておくことが望まれます |
| 解任の理由の説明 | 説明を受けた直後に記録化いたします |
着手までの流れ
解任の通知を受けた場合には、まず登記事項証明書を取得して決議の日を確認し、次いで手元の資料を整理いたします。そのうえで、決議を争うか、金銭による解決を求めるかの方針を定めることになります。
方針を定めるための検討にも時間を要しますので、3か月の期限を前提とすれば、解任の後1か月以内にご相談いただくことが望ましいと考えております。ご相談は事前予約制です。
よくあるご質問
質問1 解任を知ったのが決議の2か月後でした。
期限は決議の日から進行いたしますので、残る期間は1か月でございます。速やかに着手する必要がございます。
質問2 会社と話し合っている間に3か月が過ぎそうです。
交渉中であっても期限は進行いたします。訴えを提起したうえで交渉を継続することも考えられます。
質問3 決議の日が分かりません。
登記事項証明書により確認することができます。まず取得してください。
質問4 損害の賠償だけを求める場合も3か月以内ですか。
損害の賠償の請求には3か月の期限は適用されません。もっとも、決議を争うかどうかの判断は3か月以内に行う必要がございます。
質問5 個人保証や貸付金の問題も同じ時期に検討しますか。
併せて検討することをお勧めいたします。解決の枠組みを一体として設計することができるためでございます。
確認事項の一覧
| 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|
| 決議の日 | 登記事項証明書、株主総会議事録 |
| 解任の通知を受けた日 | 通知書、電子メール |
| 任期の残り | 登記事項証明書、定款 |
| 報酬の額 | 給与明細、源泉徴収票 |
| 個人保証及び貸付金 | 契約書、振込みの記録 |
| 交渉の経過 | 書面、電子メール |
期限は待ってくれません。まず決議の日を確定させ、そのうえでご相談ください。
本記事における非開示事項について
期限内に採るべき手続の選択、交渉と訴えの提起との組合せ、時効の完成を猶予する方法の使い分け、資料の確保の順序は、事案の内容及び相手方の姿勢により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。
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- ご相談は事前予約制です
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第330条(株式会社と役員との関係)、第339条第1項・第2項(役員の解任及び損害賠償)、第830条第1項・第2項(決議の不存在又は無効の確認の訴え)、第831条第1項(決議の取消しの訴え)、第915条第1項(変更の登記)
民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第151条第1項(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権の消滅時効)、第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
判例法理による部分 消滅時効の起算点の判断については、判例法理によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。
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