解任の理由を社内・取引先・金融機関に公表された場合 名誉及び信用の回復と損害の主張

この記事の位置付け

解任の理由を社内及び取引先へ公表された場合に関するメインのページです。本ページは、役員の解任をめぐるトラブルで名誉と信用の回復を求める二つの構成をご説明します。従業員及び取引先への説明の仕方は別のページをご参照ください。

▶ 従業員及び取引先への説明をどのように行うか

▶ 解任に正当な理由がない場合の損害賠償の請求

▶ 損害の範囲には何が含まれるのか

▶ 会社が挙げる解任の理由に反論する方法

▶ 競業避止義務の定めが再就職に与える制約

解任された数日後、以前から親しくしていた取引先の担当者から連絡があった。「御社から、経理に問題があったので役員を交代させたと説明を受けたのですが、本当ですか」。社内の朝礼でも同様の説明が行われ、金融機関の担当者からも同じ話を聞いたという。再就職の面接では、前職の退任の事情を尋ねられ、答えに窮している。当事務所には、こうしたご相談が数多く寄せられます。

会社の側は「事実を説明したにすぎない」「株主及び取引先に対する説明の責任がある」と述べます。しかし、説明の名の下に述べられた内容が、事実と異なるものであったり、必要な範囲を超えるものであったりすれば、それは別の問題を生じさせます。

結論から申し上げます。会社が解任の理由を対外的に述べたことは、解任の当否とは別に、名誉又は信用の侵害として評価される余地があります。着手すべきことは、第1に述べられた内容と範囲の特定、第2に記録の保全、第3に訂正の求めと損害の項目への追加のいずれから進めるかの選択です。以下、順にご説明します。

Contents
  1. 会社の説明が許される範囲と、これを超える場合
    1.  株主総会における説明と、対外的な公表とは別です
    2.  業務上の必要性の範囲
    3.  範囲を超えていると評価されやすい類型
  2. 名誉の侵害と信用の侵害との区別
    1.  名誉 人としての社会的な評価
    2.  信用 経済的な評価
    3.  どちらを選ぶか
  3. 公表の相手方ごとの検討
    1.  社内に対する説明
    2.  取引先に対する通知
    3.  金融機関に対する説明
    4.  求人及び再就職の場面
  4. 二つの構成の対照
  5. 退任の条件の協議に反映させる
  6. 会社の言い分ごとの検討
    1.  「株主に対する説明の義務がある」
    2.  「取引先から聞かれたので答えたにすぎない」
    3.  「述べたのは事実である」
    4.  「人事に関する情報として社内に共有した」
  7. 最初の1か月に行うこと
    1.  第1週 記録の保全
    2.  第2週 内容と範囲の特定
    3.  第3週 影響の把握
    4.  第4週 方針の決定
  8. 証拠をどのように残すか
    1.  第1 書面及び電子的な記録を確保します
    2.  第2 伝聞を記録化します
    3.  第3 影響を示す資料を集めます
    4.  第4 株主総会議事録における理由の記載を確認します
  9. 訂正及び差止めを求める場合の手順
    1.  第1段階 内容の特定と、訂正の求め
    2.  第2段階 継続又は拡大している場合
    3.  第3段階 名誉を回復する処分
    4.  刑事の手続を検討する場合
  10. 解任の損害賠償に信用の毀損を加える場合
    1.  二つの請求の関係
    2.  損害の項目の立て方
    3.  会社が真実であると主張してきた場合
  11. M&Aの後に買主が説明を行った場合
  12. よくある誤解と、控えていただきたい対応
    1.  誤解1 事実であれば何を述べてもよい
    2.  誤解2 社内で述べただけであれば問題にならない
    3.  誤解3 まず告訴すべきである
    4.  控えていただきたい対応
  13. よくあるご質問
    1.  会社が「役員を交代した」とだけ述べている場合も問題にできますか
    2.  伝え聞いただけで、直接には確認できていません
    3.  訂正を求めると、かえって話が広がりませんか
    4.  解任の損害賠償と一緒に請求できますか
    5.  金融機関から融資の条件の変更を告げられました
    6.  当時の従業員に、事情を書いてもらってもよいでしょうか
    7.  どのくらいの期間、請求することができますか
    8.  まず何から始めればよいでしょうか
  14. まとめ
  15. 出典

会社の説明が許される範囲と、これを超える場合

 株主総会における説明と、対外的な公表とは別です

取締役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、必要な説明をしなければなりません(会社法第314条)。役員の交代の理由は、株主総会において問われ得る事項です。しかし、この規定は、株主総会という場における株主に対する説明の義務を定めたものであり、取引先、金融機関又は従業員に対して理由を述べることを根拠付けるものではありません。会社が「説明の義務がある」と述べる場合には、どの場面における、誰に対する義務を指しているのかを確認します。

 業務上の必要性の範囲

役員の交代は、登記により公示される事実です。したがって、「誰が退任し、誰が就任したか」を取引先に伝えることは、業務の遂行上、必要かつ相当な範囲に属します。問題となるのは、そこに理由が付加された場合です。とりわけ、不正、不祥事、能力の欠如をうかがわせる表現が用いられた場合には、必要な範囲を超えていないかが問われます。

 範囲を超えていると評価されやすい類型

第1に、事実と異なる内容が述べられた場合です。第2に、調査の結果が確定していない段階で、あたかも認定された事実であるかのように述べられた場合です。第3に、伝える必要のない相手方にまで伝えられた場合です。第4に、伝える必要のある相手方であっても、必要な限度を超えて詳細に述べられた場合です。第5に、表現の仕方が、退任した者の人格を否定する調子を帯びている場合です。

名誉の侵害と信用の侵害との区別

「名誉毀損」という言葉が広く用いられていますが、実務では、守られている利益によって二つに分けて考えます。どちらを主張するかにより、示すべき事実も、用いる条文も変わります。

 名誉 人としての社会的な評価

個人の社会的な評価を低下させる事実を、不特定又は多数の者が知り得る状態で述べた場合には、不法行為となり得ます(民法第709条)。財産以外の損害についても賠償を請求することができます(同法第710条)。さらに、裁判所は、被害者の請求により、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます(同法第723条)。刑事上は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損する行為が処罰の対象とされ(刑法第230条第1項)、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合において、事実が真実であることが証明されたときは罰しないとされています(同法第230条の2第1項)。

 信用 経済的な評価

退任した方が自ら事業を営んでいる場合、又は同種の事業に従事している場合には、経済的な評価としての信用が問題となります。競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為は、不正競争として規律されています(不正競争防止法第2条第1項第21号)。会社と自らとが競争の関係に立つかどうかが、この主張の前提となります。

 どちらを選ぶか

再就職への影響、社内における評価の低下が中心である場合には、名誉の侵害として構成します。自らの事業の受注の減少、取引の停止が中心である場合には、信用の侵害としての構成を併せて検討します。両者は排他的なものではなく、事案によっては双方を主張します。

公表の相手方ごとの検討

 社内に対する説明

朝礼、社内報、電子メールによる全社への通知、部門ごとの説明会などが典型です。社内であっても、多数の従業員が知り得る状態であれば、公然性は認められ得ます。確認すべきは、説明の日時、場所、出席者の範囲、述べられた内容、資料が配布されたかどうかです。従業員から事情を聴く場合には、その方に不利益が及ばないよう、配慮を要します。

 取引先に対する通知

役員の交代の挨拶状に理由が記載されている場合、担当者の引継ぎの際に口頭で述べられた場合、取引先からの照会に対する回答として述べられた場合があります。挨拶状は現物を保存します。口頭の場合には、聞いた方の氏名、時期、内容を書き留め、可能であれば、その方から書面により経緯を確認します。

 金融機関に対する説明

影響が最も大きいのは、この場面です。個人保証が残っている場合、自らの借入れがある場合、新たに事業を始めようとする場合には、金融機関における評価が直接に不利益をもたらします。担当者との面談の記録、金融機関から受けた照会の内容、融資の条件の変更の有無を確認します。

 求人及び再就職の場面

前職への照会が行われ、その際に理由が述べられることがあります。採用に至らなかった経緯、照会が行われたかどうかを、応募の記録とともに整理します。

二つの構成の対照

名誉の侵害と信用の侵害は、守られている利益も、示すべき事柄も異なります。次の表により整理してください。双方を主張することも可能です。

項目 名誉の侵害として構成する場合 信用の侵害として構成する場合
守られる利益 人としての社会的な評価 営業上の経済的な評価
主な根拠 民法第709条、第710条、第723条 不正競争防止法第2条第1項第21号、民法第709条
前提となる関係 特に要しません 会社と自らとが競争の関係に立つこと
立証の中心 公然性、社会的な評価の低下 虚偽の事実であること、告知又は流布
求め得る内容 損害の賠償、名誉を回復するのに適当な処分 損害の賠償、行為の差止め
主な資料 社内報、通知の書面、聞き取りの記録 取引の停止の記録、売上げの推移

退任の条件の協議に反映させる

公表の問題は、単独で争うほかに、退任の条件の協議の中で解決を図る道があります。解任による損害の賠償、役員退職慰労金、未払の報酬、個人保証の解除、保有する株式の処遇と併せて、次の事項を協議の項目に加えます。

第1に、今後、退任の理由について対外的に述べないことです。第2に、既に説明を行った相手方に対し、必要な範囲で訂正の連絡を行うことです。第3に、取引先又は金融機関から照会があった場合の回答の内容をあらかじめ定めておくことです。第4に、再就職先からの照会に対する回答の窓口と内容を定めることです。第5に、相互に相手方を誹謗し又は中傷しない旨を定めることです。

これらは、金銭の支払を伴わない項目ですので、会社の側も応じやすく、実際上の効果が大きい部分です。ただし、これらを定める合意書には、清算に関する条項が置かれることが通例ですので、損害の賠償の請求を留保するのか、放棄するのかを明確にしたうえで署名してください。

会社の言い分ごとの検討

この類型の交渉では、会社の側から、おおむね次の4つの言い分が示されます。それぞれについて、確認すべき事柄が異なります。

 「株主に対する説明の義務がある」

株主総会において株主から説明を求められた場合の説明の義務は、会社法第314条に定められています。確認すべきは、その説明が株主総会の場において行われたのか、それとも個別の株主に対して総会の外で行われたのかという点です。また、説明を求められた事項の範囲を超えていないか、株主以外の者に対して同じ内容が伝えられていないかを確認します。株主に対する説明の義務は、取引先又は金融機関に対して理由を述べることを根拠付けるものではありません。

 「取引先から聞かれたので答えたにすぎない」

照会に応じたという経緯は、目的の相当性を基礎付ける事情となり得ます。しかし、照会の範囲を超えて詳細を述べた場合、照会がないにもかかわらず先に伝えた場合、複数の取引先に同じ内容を一斉に伝えた場合には、この言い分は成り立ちにくくなります。誰から、いつ、どのような照会があったのかを明らかにするよう求めます。

 「述べたのは事実である」

内容が真実であるとしても、目的及び範囲の相当性は別に問われます。また、会社が真実であると述べる内容が、社内調査の途中の段階の認定にとどまる場合、又は評価にわたる部分を含む場合には、事実としての真実性そのものが争点となります。真実であると主張する以上、その根拠を示すよう求めます。

 「人事に関する情報として社内に共有した」

役員の交代という事実の共有と、理由の説明とは、別のことです。共有の必要性がどこまで及ぶのか、共有の相手方の範囲が適切であったのか、共有の方法が記録に残る形であったのかを確認します。

最初の1か月に行うこと

この類型では、着手の早さが結果を左右します。おおよその目安として、次のように進めます。

 第1週 記録の保全

手元にある書面、電子メール、挨拶状、社内報を確保します。伝え聞いた内容は、聞いた日のうちに文書として書き留めます。関係する方の連絡先を整理し、後に事情を確認できる状態にしておきます。

 第2週 内容と範囲の特定

会社に対し、いつ、誰に対して、どのような説明を行ったのかを明らかにするよう求める書面を送ります。同時に、株主総会議事録における議案の理由の記載を確認します。株主であれば閲覧及び謄写を請求します(会社法第318条第4項)。

 第3週 影響の把握

取引の状況、金融機関の対応、再就職の見通しについて、現に生じている影響を書き出します。金額に置き換えられるものと、置き換えられないものとを分けます。

 第4週 方針の決定

訂正及び中止の求めを先行させるか、解任による損害の賠償の請求と併せて一度に申し入れるかを決めます。決議の手続の瑕疵を争う可能性がある場合には、決議の日から3か月という期限(会社法第831条第1項)が並行して進行していますので、その点も併せて検討します。

証拠をどのように残すか

この類型のご相談において、結果を分けるのは証拠です。公表は口頭で行われることが多く、時間の経過とともに、内容が曖昧になります。次の順序で保全してください。

 第1 書面及び電子的な記録を確保します

社内報、朝礼の資料、通知の書面、挨拶状、電子メール、社内の掲示板の記載、会社のウェブサイトの記載を、原本又は写しにより確保します。画面の写しを保存する場合には、取得した年月日と、表示されていた経路が分かる形で保存します。

 第2 伝聞を記録化します

取引先又は従業員から伝え聞いた場合には、聞いた日、聞いた相手方、聞いた内容を、その日のうちに文書として書き留めます。時間が経ってから作成した記録より、直後に作成した記録の方が価値があります。可能であれば、話してくださった方から、経緯を記載した書面をいただきます。相手方に迷惑が及ぶことを心配される方が多いのですが、まずは自らの手元の記録を整えることが先です。

 第3 影響を示す資料を集めます

取引の停止又は縮小を示す資料、金融機関から融資の条件の変更を告げられた記録、再就職の応募と結果の記録、自らの事業の売上げの推移を整えます。因果関係を示す作業は容易ではありませんので、時期の近接と、他に原因が見当たらないことを、資料により積み重ねます。

 第4 株主総会議事録における理由の記載を確認します

議案の理由として何が記載されていたかは、会社が対外的に述べた内容との整合性を検証する資料となります。株主であれば、閲覧及び謄写を請求することができます(会社法第318条第4項)。

訂正及び差止めを求める場合の手順

 第1段階 内容の特定と、訂正の求め

まず、会社に対し、いつ、誰に対して、どのような説明を行ったのかを明らかにするよう求め、あわせて、事実と異なる部分の訂正と、今後の説明の中止を求めます。内容証明郵便により行い、配達の記録を保存します。この段階で会社が説明を止める例は少なくありません。

 第2段階 継続又は拡大している場合

求めの後も説明が続けられ、又は範囲が広がっている場合には、差止めを求めることを検討します。もっとも、表現に関する事前の差止めは慎重に判断されますので、対象となる相手方、表現の内容、繰り返しの有無を具体的に特定する必要があります。既に述べられてしまった事柄については、差止めではなく、訂正及び損害の賠償により対応することとなります。

 第3段階 名誉を回復する処分

裁判所は、被害者の請求により、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます(民法第723条)。求める処分の内容は、事案に応じ、相手方を限定した訂正の通知など、実現可能なものを具体的に示すことが重要です。

 刑事の手続を検討する場合

刑法第230条第1項に当たる行為があると考える場合には、告訴を検討することがあります。ただし、刑事の手続は、民事の請求とは目的が異なり、また、公共の利害に関する場合の特例(同法第230条の2)の適用が問題となります。会社との交渉に与える影響も含め、方針を定めたうえで判断してください。

解任の損害賠償に信用の毀損を加える場合

 二つの請求の関係

正当な理由のない解任による損害の賠償(会社法第339条第2項)と、公表による名誉又は信用の侵害に基づく損害の賠償(民法第709条、第710条)とは、根拠が異なります。前者の中心は残存する任期に対応する役員報酬相当額であり、後者は、精神的な苦痛、再就職の機会の喪失、事業上の損失を対象とします。一つの交渉の中で扱うとしても、内訳は分けて主張します。

 損害の項目の立て方

第1に、精神的な苦痛に対する慰謝料です。第2に、再就職が遅れたことによる収入の減少です。第3に、自ら事業を営む場合の売上げの減少です。第4に、訂正のために要した費用です。それぞれについて、算定の根拠となる資料を対応させます。

 会社が真実であると主張してきた場合

会社は、述べた内容が真実であると主張することが多く見られます。この場合、解任の理由の当否と、公表の当否とが、同じ土俵で争われることとなります。したがって、解任の正当な理由に関する主張と、公表に関する主張とを、矛盾なく組み立てる必要があります。

M&Aの後に買主が説明を行った場合

株式を譲渡した後に解任され、買主が売主の経営の失敗を対外的に説明したというご相談があります。この場合、一般の不法行為の枠組みに加えて、株式譲渡契約の条項による請求を検討します。

確認すべきは、秘密保持に関する条項、相手方を誹謗し又は中傷しない旨の条項、及び公表に関する条項です。これらの条項が置かれている場合には、条項の違反として、契約に基づく請求を組み立てることができます。契約の条項に基づく請求は、M&Aの契約の設計に関する問題ですので、当事務所の関連する窓口と連携して取り扱います。本頁は、契約の条項によらない場合の一般の枠組みを担当します。

あわせて確認すべきは、契約の当事者が誰であるかです。株式譲渡契約の当事者は買主と売主であり、対象会社は当事者ではないのが通例です。説明を行ったのが対象会社の新たな代表者である場合には、契約の条項による請求の相手方をどのように定めるかが問題となりますので、条項の文言と、義務を負う者の範囲を確認します。買主が対象会社をして義務を遵守させる旨の条項が置かれている場合には、その条項に基づく請求を検討します。

よくある誤解と、控えていただきたい対応

 誤解1 事実であれば何を述べてもよい

述べられた内容が真実であることは、直ちに適法であることを意味しません。公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出たものであることが要件とされる場面があり(刑法第230条の2第1項)、民事においても、目的と範囲の相当性が問われます。

 誤解2 社内で述べただけであれば問題にならない

社内であっても、多数の従業員が知り得る状態であれば、公然性は認められ得ます。人数、伝わり方、記録の有無により判断されます。

 誤解3 まず告訴すべきである

刑事の手続は、必ずしも損害の回復に直結しません。多くの事案では、内容の特定と訂正の求めから始め、記録を整えながら民事の請求を組み立てる方が、実際的です。

 控えていただきたい対応

第1に、取引先又は従業員に対し、自らの側から広く反論を発信することです。事情を知らない相手方にまで事案を広げることとなり、かえって不利益が拡大します。第2に、感情的な文面を会社に送ることです。後に、会社の側から主張の材料とされます。第3に、無断で録音した内容を、そのまま第三者に配布することです。別の問題を生じさせます。第4に、話を聞かせてくださった方の氏名を、確認を得ないまま会社に伝えることです。その方に不利益が及び、以後の協力を得られなくなります。

よくあるご質問

 会社が「役員を交代した」とだけ述べている場合も問題にできますか

役員の交代の事実は登記により公示されており、これを伝えること自体は、通常は問題となりません。問題となるのは、理由が付加され、その内容が社会的な評価を低下させる場合です。

 伝え聞いただけで、直接には確認できていません

まずは、聞いた日、相手方、内容を記録してください。そのうえで、会社に対し、どのような説明を行ったのかを明らかにするよう求めます。会社が説明の内容を認める場合もあり、認めない場合には、その回答自体が今後の資料となります。

 訂正を求めると、かえって話が広がりませんか

求める相手方を会社に限り、公表の相手方を特定したうえで、必要な範囲で訂正を求めることにより、拡大を避けることができます。広く反論を発信する方法とは異なります。

 解任の損害賠償と一緒に請求できますか

できます。ただし、根拠となる条文が異なりますので、内訳を分けて主張します。和解の際にも、それぞれの項目について金額の内訳を確認してください。

 金融機関から融資の条件の変更を告げられました

変更の理由として何が告げられたのかを、その日のうちに記録してください。担当者の氏名、面談又は電話の日時、告げられた内容を書き留めます。会社の説明との時期の近接、及び他に条件の変更を要する事情が生じていないことを示すことができれば、影響を裏付ける資料となります。個人保証が残っている場合には、保証の解除の申入れと併せて進めます。

 当時の従業員に、事情を書いてもらってもよいでしょうか

差し支えありません。ただし、その方が在職中である場合には、会社との関係で不利益が及ぶおそれがありますので、あらかじめその点を説明し、了解を得たうえでお願いしてください。氏名を伏せた形の記録を先に作成し、必要な段階で改めて協力を求めるという進め方もあります。

 どのくらいの期間、請求することができますか

不法行為による損害賠償の請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、又は不法行為の時から20年を経過したときは、時効によって消滅します(民法第724条)。人の生命又は身体を害する不法行為については、3年が5年とされています(同法第724条の2)。公表が繰り返されている場合には、いつの時点の行為を対象とするかを整理する必要があります。

 まず何から始めればよいでしょうか

述べられた内容と相手方の特定、そして手元の記録の保全です。この2点が整えば、訂正を求めるか、損害の項目に加えるかの判断は、そう難しくありません。

まとめ

解任と同時に、その理由を社内、取引先又は金融機関に述べられた場合、生じている問題は解任の当否だけではありません。名誉又は信用の侵害という、別個の問題が併存しています。着手の順序は、第1に述べられた内容と相手方の特定、第2に記録の保全、第3に訂正の求めと損害の項目への追加の選択です。

この類型は、時間の経過とともに証拠が失われやすく、また、影響が静かに広がる点に特徴があります。伝え聞いた段階であっても、その日のうちに記録を残してください。名誉の侵害と信用の侵害とを区別し、解任による損害の賠償とは内訳を分けて主張することにより、交渉の見通しは大きく変わります。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

出典

  • 民法(明治29年法律第89号)第709条、第710条、第723条、第724条、第724条の2
  • 刑法(明治40年法律第45号)第230条第1項、第230条の2第1項
  • 不正競争防止法(平成5年法律第47号)第2条第1項第21号
  • 会社法(平成17年法律第86号)第314条、第318条第4項、第339条第2項
  • e-Gov法令検索(デジタル庁) 法令の条文の確認に用いています。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

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