代表取締役を解職されても取締役の地位は残るのか

代表取締役を解職されても取締役の地位は残るのか

代表取締役を解職されても、取締役の地位は残ります。解職は代表権を失わせるものであり、取締役の地位を失わせるものではないためでございます。もっとも、報酬の減額や次の解任の議案が続くことが少なくありませんので、その後の備えが重要でございます。本記事では、解職と解任との違いを整理いたします。

 結論 取締役の地位は残ります

解職と解任との違いは、次のとおりです。

項目 代表取締役の解職 取締役の解任
決議を行う機関 取締役会(会社法第362条第2項第3号) 株主総会(会社法第339条第1項)
失われるもの 代表権 取締役の地位
残るもの 取締役の地位 残りません
損害の賠償 明文の規定はございません 正当な理由がない場合に請求することができます(同条第2項)
登記 代表取締役の登記が変更されます 取締役の登記が変更されます

したがって、解職の後も、取締役として取締役会に出席し、議決権を行使することができます。

 代表権と取締役の地位

 代表取締役の権限

取締役は、会社を代表いたしますが、他に代表取締役その他会社を代表する者を定めた場合には、この限りでありません(会社法第349条第1項)。代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します(同条第4項)。

解職により失われるのは、この代表権でございます。取締役としての地位、すなわち取締役会の構成員としての地位は失われません。

 残る権限と義務

残るもの 内容
取締役会への出席及び議決権 取締役会の構成員として議決に加わります
取締役会の招集の請求 招集権者に対して招集を請求することができます
議事録の閲覧 取締役として確認することができます
忠実義務 会社のため忠実に職務を行う義務を負います(会社法第355条)
任務を怠った場合の責任 会社に対する損害賠償の責任を負い得ます

権限が縮小しても責任は残りますので、会社の状況を把握し続けることが重要でございます。

 報酬への影響

取締役の報酬等は、定款に定めがないときは株主総会の決議によって定めるものとされております(会社法第361条第1項)。したがって、解職により当然に報酬が減額されるものではございません。

株主総会の決議において総額のみが定められ、個別の配分が取締役会に委ねられている場合には、取締役会の決議により配分が変更されることがございます。もっとも、役員の同意なく報酬を減額することは、原則として認められないと解されております。

 解職の決議を争うことができるか

取締役会の決議については、株主総会の決議のような取消しの訴えの制度が設けられておりません。したがって、決議が無効であることを前提として、代表取締役の地位を有することの確認を求める訴えを提起することが基本となります。

解職の対象となる代表取締役は、決議について特別の利害関係を有する取締役に当たり、議決に加わることができないと解されております(会社法第369条第2項)。定足数及び多数の計算を確認することが、争点となり得ます。

 その後に生じ得る事態への備え

生じ得る事態 備え
取締役の解任の議案が上程されること 株主構成を把握し、議決権の見通しを立てます
報酬の配分の変更 報酬の決議の内容を確認します
職務の取上げ 取締役会の招集を請求し、記録を残します
会社の資料からの遮断 必要な資料の写しを確保します
個人保証の問題 保証契約の内容及び残高を確認します

解職は、その後の展開の始まりであることが少なくありません。この段階でご相談いただくことにより、採り得る手段が広がります。

 登記の取扱い

代表取締役の氏名及び住所は登記事項とされておりますので(会社法第911条第3項)、解職の決議がされた場合には、2週間以内に変更の登記がされることになります(会社法第915条第1項)。

取締役としての記載は残りますので、登記事項証明書を確認することにより、自らの地位を確かめることができます。

よくあるご質問

質問1 解職されると会社に行けなくなりますか。

取締役の地位は残りますので、取締役会への出席を求めることができます。日常の業務への関与は、業務の分掌の定めによります。

質問2 解職について損害の賠償を請求できますか。

解職については、解任に関する損害の賠償の規定が直接に適用されるものではないと解されております。報酬の減額を伴う場合には、その点を検討することになります。

質問3 次に解任されるのではないかと心配です。

取締役の解任は株主総会の決議によりますので、株主構成の把握が重要でございます。株主名簿を確認してください。

質問4 代表印を返すよう求められました。

代表権を失った以上、返還に応じることが原則でございます。返還の事実を記録に残してください。

質問5 肩書はどうなりますか。

代表権を有しないにもかかわらず社長等の名称を用いることは、取引の相手方の誤認を招くおそれがございます。会社と協議してください。

 確認事項の一覧

確認事項 確認の方法
解職の決議の内容 取締役会議事録
招集の通知の有無及び時期 手元の通知
出席及び賛否の内訳 取締役会議事録
登記の記載 登記事項証明書
報酬の決議の内容 株主総会議事録
株主の構成 株主名簿

解職の段階で資料を確保しておくことが、その後の展開への備えとなります。

本記事における非開示事項について

解職の決議の効力を争うかどうかの判断、報酬の減額への対応、次に想定される展開への備え、取締役として残る立場を活用する方法は、取締役会の構成及び株主構成により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

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  • ご相談は事前予約制です

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第330条(株式会社と役員との関係)、第339条第1項・第2項(役員の解任及び損害賠償)、第349条第1項・第4項(株式会社の代表)、第355条(忠実義務)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第362条第2項第3号(代表取締役の選定及び解職)、第363条第1項(業務を執行する取締役)、第369条第1項・第2項(取締役会の決議)、第911条第3項(登記事項)、第915条第1項(変更の登記)

判例法理による部分 解職の対象となる代表取締役が特別の利害関係を有する取締役に当たるかについては、判例法理によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。

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