保証債務を履行した場合の求償の進め方

保証債務を履行した場合の求償の進め方
個人保証に基づいて金融機関に支払を行った場合には、主たる債務者である会社に対して求償することができます。併せて、弁済による代位により、金融機関が有していた担保を行使することも考えられます。もっとも、会社に資力がなければ現実の回収は困難でございます。本記事では、求償の手順と、実効性を高めるための視点を整理いたします。
結論 求償権と代位とを併せて用います
整理は、次のとおりです。
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 求償権の行使 | 会社に対し、支払った額等の償還を求めます(民法第459条第1項) |
| 弁済による代位 | 金融機関が有していた債権及び担保を行使します(民法第499条、第501条第1項) |
| 共同保証人に対する求償 | 他に保証人がいる場合に、負担部分を超える額について求償します(民法第465条第1項) |
| 会社の資産の把握 | 回収の見通しを立てます |
| 保全の手続 | 資産の処分のおそれがある場合に検討します |
代位により物的な担保を行使することができる場合には、無担保の求償権のみによる場合と比較して、回収の見通しが大きく変わります。
求償権の内容
委託を受けた保証人の求償権
主たる債務者の委託を受けて保証をした者は、債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額等について求償権を有します(民法第459条第1項)。役員が会社の依頼により保証をした場合は、通常これに当たります。
求償の範囲には、支出した額のほか、支出の日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償が含まれるものとされております。
委託を受けない保証人の場合
主たる債務者の委託を受けないで保証をした者の求償権は、主たる債務者が現に利益を受けている限度において認められるものとされております(民法第462条第1項)。委託の有無により範囲が異なりますので、保証に至る経緯を整理しておく必要がございます。
期限前の弁済等
主たる債務の弁済期の前に債務の消滅行為をした場合には、求償の範囲が制限されることがございます(民法第459条の2第1項)。金融機関との協議において一括の支払を行う場合には、この点に留意する必要がございます。
通知の取扱い
保証人が主たる債務者に通知をしないで債務の消滅行為をした場合等については、求償が制限されることがある旨の規定が設けられております(民法第463条)。
実務上は、支払を行う前後に会社に対して書面により通知を行い、その記録を残すことが基本でございます。退任により会社との連絡が途絶えている場合であっても、配達の記録の残る方法により通知を行ってください。
弁済による代位
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位いたします(民法第499条)。代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができます(民法第501条第1項)。
したがって、金融機関が会社の不動産に抵当権を有していた場合には、代位により当該抵当権を行使することが考えられます。この場合、抵当権の移転の登記が必要となりますので、金融機関の協力を得る必要がございます。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 担保の有無 | 抵当権、質権、譲渡担保の設定の状況 |
| 担保の目的物 | 会社の不動産、売掛債権、動産 |
| 他の保証人 | 共同保証人の有無及び負担部分 |
| 一部の弁済か全部の弁済か | 一部の弁済の場合には代位の範囲が制限されます |
| 金融機関の協力 | 債権証書及び担保に関する書類の交付 |
共同保証人に対する求償
数人の保証人がある場合において、そのうちの1人が自己の負担部分を超える額を弁済したときは、他の保証人に対して求償することができるものとされております(民法第465条第1項)。
負担部分は、特段の合意がなければ平等と解されるのが原則でございます。もっとも、経営への関与の程度に応じて別途の合意がされている場合には、その合意によることになります。
回収の実効性を高める
会社に対する求償は、会社に資力がなければ実現いたしません。したがって、支払を行う前の段階で、会社の資産の状況を把握しておくことが重要でございます。
株主としての地位を有する場合には、計算書類等の閲覧を請求することができ(会社法第442条第3項)、議決権又は株式の100分の3以上を有する場合には、会計帳簿の閲覧等を請求することができます(会社法第433条第1項)。
会社が資産を処分するおそれがある場合には、保全の手続を検討することになります。求償権は債権の消滅時効の規定の適用を受けますので(民法第166条第1項)、時効の管理も必要でございます。
よくあるご質問
質問1 分割で支払っております。求償はいつ行いますか。
支払をした都度、その範囲で求償権が生じます。実務上は、一定額に達した段階でまとめて請求することが多いと考えられます。
質問2 会社が破産しました。
破産の手続において債権を届け出ることになります。配当が見込まれない場合には、現実の回収は困難でございます。
質問3 金融機関が担保の書類を渡してくれません。
代位の範囲及び一部の弁済であるかにより、取扱いが異なります。まず弁済の範囲を確定させたうえで協議することになります。
質問4 他の元役員も保証人でした。
共同保証人に対する求償を検討することになります。負担部分に関する合意の有無を確認してください。
質問5 求償と貸付金の返還とを一緒に請求できますか。
いずれも会社に対する請求でございますので、併せて請求することができます。
確認事項の一覧
| 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|
| 保証の委託の有無 | 取締役会議事録、依頼の記録 |
| 支払の事実及び額 | 振込みの記録、金融機関の受領書 |
| 会社への通知 | 配達の記録、電子メール |
| 担保の設定の状況 | 登記事項証明書、担保に関する契約書 |
| 他の保証人の有無 | 保証契約書 |
| 会社の資産の状況 | 計算書類、登記事項証明書 |
支払を行う前にご相談いただくことにより、代位により行使し得る担保の範囲を確保しやすくなります。
本記事における非開示事項について
弁済の方法及び時期の選び方、代位により担保を確保するための金融機関との協議の進め方、共同保証人に対する求償の組み立て、会社の資産の把握と保全の手続の検討は、担保の状況及び会社の財務の状況により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。
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弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
民法 第442条第1項(連帯債務者間の求償権)、第446条第1項(保証人の責任)、第459条第1項(委託を受けた保証人の求償権)、第459条の2第1項(期限前の弁済等)、第460条(委託を受けた保証人の事前の求償権)、第462条第1項(委託を受けない保証人の求償権)、第463条(通知を怠った保証人の求償の制限)、第465条第1項(共同保証人間の求償権)、第499条(弁済による代位)、第501条第1項(弁済による代位の効果)、第166条第1項(債権の消滅時効)
会社法 第330条(株式会社と役員との関係)、第433条第1項(会計帳簿の閲覧等の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
判例法理による部分 求償の範囲及び共同保証人間の負担部分の判断については、判例法理及び契約の解釈によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。
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