臨時の株主総会の招集請求が届いた場合の初動

臨時の株主総会の招集請求が届いた場合の初動

株主から臨時の株主総会の招集の請求が届いた場合、これを無視することは適切ではありません。請求の要件が満たされているときに会社が応じなければ、株主が裁判所の許可を得て自ら招集することができ、会社の関与しないところで総会が行われることになります。本記事では、請求を受けた場合の初動を整理いたします。

 結論 無視せず、要件と議決権をまず確認します

初動の順序は、次のとおりです。

順序 内容
第1 請求の書面の到達の日を記録します
第2 請求をした株主が要件を満たしているかを株主名簿により確認します
第3 請求において示された目的である事項及び理由を確認します
第4 現在の議決権の分布を把握し、決議の見通しを立てます
第5 招集するか否か、招集する場合の日程を決定します
第6 取締役会の決議その他の必要な手続を経ます

特に重要なのは、請求の到達の日でございます。この日から一定の期間内に招集の手続が行われない場合には、株主が裁判所の許可を得て招集することができるためでございます。

 請求の要件

 条文の内容

総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(会社法第297条第1項)。定款により、この割合及び期間を下回る定めをすることができます。

公開会社でない株式会社においては、6か月前から引き続き有することという要件は適用されません(同条第2項)。中小の株式会社の多くはこれに当たりますので、株式を取得した直後の株主であっても請求することができます。

 確認すべき事項

確認事項 内容
請求者の持株 株主名簿の記載により議決権の割合を確認します
保有の期間 公開会社である場合には6か月の要件を確認します
定款の定め 要件を緩和する定めの有無を確認します
目的である事項 株主総会の権限に属する事項であるかを確認します
招集の理由 示されているかを確認します
請求の名義 共有に属する株式の場合には権利を行使する者の通知を確認します

 応じない場合に生ずること

請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、又は請求があった日から8週間以内の日を会日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができます(会社法第297条第4項)。定款により、この期間を下回る定めをすることができます。

株主が招集する場合には、議長その他の運営について会社の関与が及ばないことになります。したがって、請求を無視することは、かえって不利な結果を招くおそれがございます。

 会社が招集する場合の手続

 招集の決定

株主総会を招集する場合には、日時及び場所、目的である事項その他の事項を定めなければなりません(会社法第298条第1項)。取締役会設置会社においては、取締役会の決議によりこれを定めることになります。

 招集の通知

招集の通知は、原則として、公開会社では総会の日の2週間前までに、公開会社でない株式会社では1週間前までに発しなければなりません(会社法第299条第1項)。期間の不足は、決議の取消しの事由となり得ます(会社法第831条第1項)。

 議題及び議案

株主は、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができ(会社法第303条第1項・第2項)、株主総会において議案を提出することができます(同法第304条)。また、議案の要領を株主に通知することを請求することができます(同法第305条第1項)。

請求された議題を招集の通知に記載しないまま総会を開催した場合には、手続の瑕疵が生ずるおそれがございます。

 議決権の把握

確認事項 内容
株主名簿の整備 記載の正確性を確認します
自己株式の有無 自己株式には議決権がありません
名義株式の有無 帰属に争いがある株式を把握します
共有に属する株式 権利を行使する者の通知の有無を確認します
基準日の定め 定款の定めを確認します(会社法第124条第1項)
委任状の状況 代理行使の見込みを把握します(会社法第310条第1項・第2項)

役員の解任の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行われます(会社法第341条)。議決権の分布の把握が、見通しの前提となります。

 行ってはならない対応

請求を受けた後に、議決権の分布を変えることのみを目的として新株を発行することは、決議の取消し又は新株発行の効力をめぐる争いを招くおそれがございます。慎重な検討が必要でございます。

また、株主名簿の記載を一方的に変更すること、請求の到達の事実を否認することは、いずれも後の争いにおいて信用を損なう結果となります。手続に従って対応することが基本でございます。

よくあるご質問

質問1 請求の理由が抽象的です。

理由の記載の程度は争点となり得ます。もっとも、記載が乏しいことのみをもって請求を無視することは、危険が大きいと考えられます。

質問2 請求者が株主かどうか疑わしい場合はどうしますか。

株主名簿の記載により確認いたします。名義書換えが未了である場合には、対抗要件の点を検討することになります。

質問3 8週間より先の日に設定してもよいですか。

請求があった日から8週間以内の日を会日とする招集の通知が発せられない場合には、株主が裁判所の許可を得て招集することができます。期間に留意する必要がございます。

質問4 議題を変更して招集できますか。

請求において示された目的である事項を除外することは、適切ではございません。手続の瑕疵を招くおそれがございます。

質問5 当事務所はどちらの立場でも対応できますか。

当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っております。ご相談は事前予約制です。

 確認事項の一覧

確認事項 確認の方法
請求の到達の日 配達の記録、受領の記録
請求者の持株及び議決権 株主名簿
定款の要件に関する定め 定款の謄本
目的である事項及び理由 請求の書面
会社の機関の設計 登記事項証明書
議決権の分布 株主名簿、計算書類

請求を受けた段階でご相談いただくことにより、日程と手続を計画的に定めることができます。

本記事における非開示事項について

招集するか否かの判断、日程の設定の考え方、議題の記載の仕方、議決権の分布を踏まえた運営の準備、株主が招集する場合に備えた対応は、株主構成及び請求の内容により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第124条第1項(基準日)、第296条第2項(株主総会の招集)、第297条第1項・第2項・第4項(株主による招集の請求)、第298条第1項(株主総会の招集の決定)、第299条第1項(株主総会の招集の通知)、第303条第1項・第2項(議題の提案権)、第304条(議案の提案権)、第305条第1項(議案の要領の通知の請求)、第309条第1項・第2項(株主総会の決議)、第310条第1項・第2項(議決権の代理行使)、第339条第1項(役員の解任)、第341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)、第831条第1項(決議の取消しの訴え)

判例法理による部分 招集の請求の理由の記載の程度及び請求の濫用の判断については、判例法理によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。

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