会社が保証の解除に協力しない場合の手段

会社が保証の解除に協力しない場合の手段

役員を退任しても、会社の借入れに対する個人保証は当然には消滅いたしません。保証は債権者である金融機関との間の契約でございますので、会社の意向のみで解除することはできません。もっとも、採り得る手段は複数ございます。本記事では、会社が協力しない場合の進め方を整理いたします。

 結論 相手方は債権者であり、会社ではありません

整理は、次のとおりです。

相手方 求め得る内容
金融機関 保証契約の解除又は保証人の交代についての同意
会社 金融機関に対する働きかけ、代わりの担保の提供、借換えの実行
後任の経営者 保証人としての引受け
金融機関 主たる債務の履行の状況に関する情報の提供(民法第458条の2)

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います(民法第446条第1項)。退任という事情は、この責任に直接の影響を及ぼすものではございません。

 まず確認すべき事項

 保証の種類

種類 内容
特定の債務の保証 個別の借入れについて保証するもの。当該借入れの完済により終了いたします
根保証 一定の範囲に属する不特定の債務を保証するもの。元本が確定するまで責任が続きます

個人が保証人となる根保証契約は、極度額を定めなければその効力を生じないものとされております(民法第465条の2第1項・第2項)。極度額の定めの有無を、契約書により確認してください。

 元本の確定

個人根保証契約においては、債権者が保証人の財産について強制執行等を申し立てたとき、保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、又は主たる債務者若しくは保証人が死亡したときに、主たる債務の元本が確定するものとされております(民法第465条の4第1項)。

退任は、法律上の元本の確定の事由とはされておりません。もっとも、契約において退任を元本の確定の事由とする定めが置かれている場合がございますので、契約書を確認する必要がございます。

 保証の対象となる債務の範囲

保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮するものとされております(民法第448条第1項)。保証の対象とされている債務の範囲を、契約書及び残高の証明により確認してください。

 金融機関に対する交渉

 交渉の材料

材料 内容
後任の経営者による保証 実際に経営を行う者が保証人となることの合理性を示します
会社の財務の状況 返済の見通しが立っていることを示します
経営への関与の終了 退任により会社を支配する立場を離れたことを示します
担保の状況 物的な担保により債権が保全されていることを示します
借換え 新たな借入れにより従前の債務を完済することを提案します

経営者保証に関するガイドラインは、金融機関と経営者との間の保証の取扱いについて定められた自主的な準則でございます。法令ではございませんので、これに基づいて解除を法的に強制することはできませんが、交渉の際の材料となり得ます。

 情報の提供を求める

主たる債務者の委託を受けて保証をした場合には、債権者は、保証人の請求があったときは、遅滞なく、主たる債務の元本及び利息等についての不履行の有無並びにこれらの残額等に関する情報を提供しなければならないものとされております(民法第458条の2)。

現在の残高及び返済の状況を把握することは、交渉の前提となります。まずこの請求を行うことをお勧めいたします。

 会社に対する請求

会社に対しては、保証を外すよう金融機関に働きかけることを求めることになります。株式の譲渡契約又は退任に関する合意において、保証を外す旨の定めがある場合には、その履行を求めることができます。

定めがない場合であっても、会社の利益のために保証をしたという経緯に照らし、会社に対して協力を求める交渉を行うことになります。もっとも、これを法的に強制することは、定めがない限り困難でございます。

また、保証債務を履行した場合には、主たる債務者である会社に対して求償することができます(民法第459条第1項)。一定の場合には、履行の前に求償することができる制度もございます(民法第460条)。

 保証を外せない場合の備え

備え 内容
残高の定期的な確認 情報の提供の請求を継続的に行います
会社の状況の把握 計算書類の閲覧等により、返済の見通しを確認します
求償の準備 会社の資産の状況を把握しておきます
新規の借入れへの不関与 退任の後の新規の借入れに保証が及ばないよう、書面により明らかにいたします
合意の書面化 会社との間の合意は、必ず書面といたします

退任の後に会社が新たな借入れを行い、これに保証が及ぶかどうかは、根保証の元本が確定しているかにより異なります。この点を明確にしておくことが特に重要でございます。

 貸付金がある場合

役員として会社に資金を貸し付けている場合には、その返還の請求と併せて交渉することになります。保証を外すことと、貸付金の返済とを、一体の解決として協議することが実務上は少なくありません。

また、役員として職務を行うために支出した費用については、委任に関する規定により償還を求める余地がございます(民法第650条)。

よくあるご質問

質問1 退任したので保証は自動的に終わりますか。

終わりません。保証は債権者との契約でございますので、解除には債権者の同意が必要でございます。

質問2 保証契約書が手元にありません。

金融機関に対して写しの交付を求めてください。併せて、現在の残高の確認を求めることになります。

質問3 会社が話し合いに応じません。

会社を経由せず、金融機関に対して直接に協議を求めることが考えられます。保証人としての立場に基づく請求でございます。

質問4 退任後の借入れにも保証は及びますか。

根保証であり元本が確定していない場合には、及ぶ余地がございます。契約書の定めを確認し、書面により明確にしておくことが重要でございます。

質問5 保証債務を支払った場合はどうなりますか。

会社に対して求償することができます。もっとも、会社に資力がない場合には、現実の回収は困難となります。

 確認事項の一覧

確認事項 確認の方法
保証契約の内容 保証契約書、金融機関への写しの請求
保証の種類及び極度額 同上
元本の確定の事由の定め 同上
現在の残高 情報の提供の請求(民法第458条の2)
退任に関する合意 合意書、株式譲渡契約書
会社への貸付金 金銭消費貸借契約書、振込みの記録
会社の財務の状況 計算書類

保証契約書と残高の確認が、交渉の出発点でございます。まずこの二つを揃えてください。

本記事における非開示事項について

金融機関との交渉の進め方、後任の経営者への保証の引継ぎを求める場合の構成、退任後の新規の借入れに保証を及ぼさないための書面の記載、貸付金の返還と一体として解決を図る場合の順序は、会社の財務の状況及び金融機関の姿勢により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

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  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
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弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

民法 第446条第1項(保証人の責任)、第448条第1項(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様)、第458条の2(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)、第459条第1項(委託を受けた保証人の求償権)、第460条(委託を受けた保証人の事前の求償権)、第465条の2第1項・第2項(個人根保証契約の極度額)、第465条の4第1項(個人根保証契約の元本の確定事由)、第650条(受任者による費用等の償還請求)

会社法 第330条(株式会社と役員との関係)、第339条第1項(役員の解任)

その他 経営者保証に関するガイドラインは、金融機関と経営者との間の保証の取扱いについて定められた自主的な準則でございます。法令ではございませんので、これに基づく解除を法的に強制することはできません。

判例法理による部分 退任を理由とする保証契約の解約の主張の可否については、判例法理及び契約の解釈によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。

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