委任状の取り付けが進んでいる場合に確認すべきこと

委任状の取り付けが進んでいる場合に確認すべきこと

解任の議案に向けて委任状の取り付けが進んでいる場合、まず確認すべきは、誰がどれだけの議決権を集めているかでございます。委任状には形式及び手続の要件がございますので、これを満たしていない場合には効力が問題となります。本記事では、確認すべき事項と、効力を争う場合の視点を整理いたします。

 結論 議決権の分布と委任状の形式を確認します

確認の要点は、次のとおりです。

項目 確認の内容
議決権の分布 株主名簿により、誰がどれだけの議決権を有するかを把握します
委任の相手方 誰が代理人となっているかを確認します
代理権の証明 書面が会社に提出されているかを確認します(会社法第310条第1項・第2項)
総会ごとの授与 代理権の授与が当該総会についてされているかを確認します(同条第2項)
定款の定め 代理人の資格及び数に関する定めを確認します(同条第5項)
備置き及び閲覧 総会の後に書面の閲覧を請求することができます(同条第6項・第7項)

総会の前の段階では会社が委任状の全容を把握できないことが多くございますので、株主名簿に基づく議決権の分布の把握が中心となります。

 議決権の代理行使の要件

 代理人による行使

株主は、代理人によってその議決権を行使することができます。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を会社に提出しなければなりません(会社法第310条第1項)。

代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならないものとされております(同条第2項)。したがって、期間を定めない包括的な委任状は、当該総会についての代理権を証明するものとして疑義が生ずる余地がございます。

 定款による制限

会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができます(会社法第310条第5項)。また、代理人の資格を株主に限る旨の定款の定めが置かれていることがございます。

このような定めの効力については、総会が株主以外の者により攪乱されることを防止する趣旨に照らして合理的な範囲で有効と解する考え方がございます。もっとも、事案により判断が分かれ得る領域でございます。

 書面による議決権の行使との違い

委任状は代理人に議決権の行使を委ねるものであり、議決権行使書面により株主自らが賛否を示すものとは異なります。両者が併存する場合の取扱いは、招集の通知において定められた内容によります。

 委任状の内容の確認

確認事項 問題となる点
対象となる総会の特定 特定されていない場合には効力が問題となります
代理人の記載 白紙のまま提出されている場合の取扱い
議案ごとの賛否の指示 指示に反する行使がされた場合の効力
作成の年月日 基準日及び招集の通知との前後関係
署名又は記名押印 本人の意思によるものか
共有に属する株式 権利を行使する者の通知の有無(会社法第106条)

白紙の委任状が用いられている場合には、誰が代理人となったのかが後に争点となります。取り付けの過程で用いられた書式を入手できる場合には、これを確保しておくことが有用でございます。

 取り付けの過程に問題がある場合

委任状の取り付けに際して、事実と異なる説明がされた場合には、意思表示の取消しの主張がされる余地がございます(民法第96条第1項)。また、株主が委任を撤回した場合には、代理権は消滅いたします。

もっとも、これらは委任をした株主が主張すべき事項でございます。会社又は他の株主が、委任をした株主に代わってこれを主張することはできないのが原則でございます。

取り付けの過程において、会社の資料が無断で用いられた場合や、株主名簿の情報が不正に持ち出された場合には、別途の問題が生じます。この点は、事実関係を記録に残しておくことが必要でございます。

 総会の運営における留意点

委任状の効力に疑義がある場合であっても、総会の場において一方的にこれを無効として扱うことは、決議の取消しの事由を作ることになりかねません。

議長としては、提出された書面を確認し、疑義がある点を記録に残したうえで、慎重に取り扱うことが基本でございます。効力の判断が困難な場合には、あらかじめ弁護士に相談し、方針を定めておくことが望まれます。

 総会の後の確認

会社は、株主総会の日から3か月間、代理権を証明する書面を本店に備え置かなければならず、株主は、営業時間内はいつでも、その閲覧又は謄写を請求することができます(会社法第310条第6項・第7項)。

決議の効力を争う場合には、この閲覧により委任状の内容を確認することが出発点となります。決議の取消しの訴えには決議の日から3か月という期限がございますので(会社法第831条第1項)、速やかに請求することが必要でございます。

よくあるご質問

質問1 誰に委任状が集まっているか分かりません。

総会の前に会社が把握することは困難な場合が多くございます。株主名簿により議決権の分布を把握し、見通しを立てることになります。

質問2 定款で代理人を株主に限っています。

このような定めが置かれている例は少なくありません。効力については議論がございますので、一方的に無効として扱うことは避けるべきでございます。

質問3 白紙の委任状は有効ですか。

代理人が特定されていない点が問題となり得ます。取扱いは事案により異なりますので、断定することはできません。

質問4 委任した株主が撤回したいと言っております。

株主自身が撤回の意思を会社に伝えることが基本でございます。書面により行い、記録を残してください。

質問5 総会の後に委任状を見ることはできますか。

株主は、総会の日から3か月間、閲覧又は謄写を請求することができます。

 確認事項の一覧

確認事項 確認の方法
議決権の分布 株主名簿
定款の代理人に関する定め 定款の謄本
基準日の定め 定款、招集の通知
招集の通知の内容 通知の写し
提出された委任状 総会の後の閲覧又は謄写の請求
取り付けの過程 株主からの聴取、書式の写し

委任状の効力は、総会の運営と決議の効力の双方に関わります。早い段階でご相談ください。

本記事における非開示事項について

議決権の分布を踏まえた見通しの立て方、委任状の効力に疑義がある場合の総会における取扱い、決議の効力を争う場合の主張の組み立て、取り付けの過程における問題を主張する場合の構成は、株主構成及び資料の状況により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
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弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第106条(共有者による権利の行使)、第124条第1項(基準日)、第125条第2項(株主名簿の閲覧等)、第130条第1項(株式の譲渡の対抗要件)、第297条第1項(株主による招集の請求)、第299条第1項(株主総会の招集の通知)、第310条第1項・第2項・第5項・第6項・第7項(議決権の代理行使)、第339条第1項(役員の解任)、第341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)、第831条第1項(決議の取消しの訴え)

民法 第96条第1項(詐欺又は強迫)、第99条第1項(代理行為の要件及び効果)、第111条第2項(代理権の消滅事由)

判例法理による部分 代理人の資格を株主に限る定款の定めの効力については、判例法理によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。

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