解任された創業者が会社に残せる関与の形

解任された創業者が会社に残せる関与の形

役員の地位を失った場合であっても、会社との関わりを完全に断たれるわけではございません。株主としての権利、契約による関与、資産の貸与を通じた関与といった形が考えられます。もっとも、いずれにも限界がございます。本記事では、残し得る関与の形と、その限界を整理いたします。

 結論 三つの経路が考えられます

関与の形は、次のとおりです。

経路 内容 性質
株主としての権利 議決権、閲覧の請求、提案権、招集の請求 株式を保有する限り、会社の同意を要しません
契約による関与 顧問、相談役、業務委託 会社の同意が必要でございます
資産を通じた関与 不動産の賃貸、貸付金、商標その他の権利 契約の内容によります

会社の同意を要しないという点で、株主としての権利が最も確実な経路でございます。株式を手放さないことが、関与を維持する基本となります。

 株主としての関与

 行使することができる権利

権利 要件
議決権の行使 株主であること(会社法第308条第1項)
計算書類等の閲覧等 株主であること(会社法第442条第3項)
会計帳簿の閲覧等の請求 議決権又は株式の100分の3以上(会社法第433条第1項)
株主総会の招集の請求 議決権の100分の3以上(会社法第297条第1項)
議題の提案 会社法第303条第1項・第2項の定めによります
議案の要領の通知の請求 会社法第305条第1項の定めによります
責任追及等の訴えの提起 会社法第847条の定めによります

公開会社でない株式会社においては、保有の期間に関する要件が適用されない場合がございます。定款の定めと併せて確認することが必要でございます。

 限界

株主としての権利は、会社の経営を直接に行うものではございません。役員の選任及び解任は株主総会の決議によりますので(会社法第329条第1項、第339条第1項)、議決権の割合が少数にとどまる場合には、経営に対する影響力は限られます。

 契約による関与

 顧問及び相談役

顧問又は相談役という名称による関与は、会社法上の機関ではございません。会社との間の委任又は準委任の契約によるものと解されるのが通例でございます(民法第643条、第656条)。

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができますので(民法第651条第1項)、期間の定めがない場合には、会社の判断により終了させられる余地がございます。したがって、期間、報酬、解除の要件を書面により定めておくことが重要でございます。

 業務委託

特定の業務を受託する形での関与も考えられます。この場合、業務の範囲、報酬、期間を明確に定める必要がございます。成果物の完成を目的とする場合には、請負の性質を有することになります(民法第632条)。

 留意点

契約による関与においては、会社の業務の執行に関与しているとの外観が生じないよう留意する必要がございます。事実上の取締役として責任を問われる余地が生じ得るためでございます。

 資産を通じた関与

会社が使用する不動産を創業者が個人で所有している場合には、賃貸借の関係が継続いたします(民法第601条)。この場合、賃料の支払及び契約の更新をめぐる交渉が生じ得ます。

また、会社に対する貸付金が残っている場合には、債権者としての立場が残ります。商標その他の権利を個人で保有している場合も同様でございます。

これらは、経営に対する影響力を有する一方で、会社との対立を深める要因ともなり得ます。感情的な対応を避け、契約に基づいて処理することが望まれます。

 行うべきでない関与

行為 問題
従業員に直接に指示を出すこと 事実上の取締役としての責任を問われる余地がございます
取引先に対して会社を代表するかのように振る舞うこと 会社及び相手方に損害を与える余地がございます
会社の資料を無断で持ち出すこと 責任を問われるほか、後の主張の信用を損ないます
会社の情報システムへの権限のないアクセス 刑事上の問題を生じ得ます

 関与の形を定めるための交渉

解任をめぐる争いの解決に際して、関与の形を併せて協議することがございます。損害の賠償、個人保証の解除、貸付金の返済、株式の取扱いと併せて、一体の枠組みとして協議することが実務上は少なくありません。

協議の内容は、必ず書面により明らかにしてください。ご相談は事前予約制です。

よくあるご質問

質問1 株式を売却するよう求められております。

売却すれば株主としての権利を失いますので、慎重な検討が必要でございます。価格及び時期を含めてご相談ください。

質問2 名誉会長という肩書を提案されました。

会社法上の機関ではございませんので、権限の内容を契約により明確に定める必要がございます。

質問3 顧問料はどの程度が相当ですか。

事案により異なりますので、一般的な水準を申し上げることはできません。従前の報酬及び業務の内容を踏まえて協議することになります。

質問4 会社が一切の関与を認めません。

株主としての権利は会社の同意を要しませんので、これを中心に検討することになります。

質問5 従業員から相談を受けた場合はどうしますか。

指示を出すことは避け、会社の窓口に案内することが適切でございます。

 確認事項の一覧

確認事項 確認の方法
持株の数及び割合 株主名簿
定款の定め 定款の謄本
会社の機関の設計 登記事項証明書
会社に貸与している資産 賃貸借契約書、登記事項証明書
会社への貸付金 金銭消費貸借契約書、振込みの記録
個人保証の状況 保証契約書

関与の形は、資産及び権利の状況により定まります。まず全体を整理してご相談ください。

本記事における非開示事項について

関与の形を協議する場合の順序、顧問契約の条項の定め方、事実上の取締役としての責任を避けるための線引き、株式の取扱いと併せた解決の枠組みは、株主構成及び資産の状況により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員の解任に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第297条第1項(株主による招集の請求)、第303条第1項・第2項(議題の提案権)、第305条第1項(議案の要領の通知の請求)、第308条第1項(議決権の数)、第329条第1項(役員の選任)、第330条(株式会社と役員との関係)、第339条第1項・第2項(役員の解任及び損害賠償)、第433条第1項(会計帳簿の閲覧等の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)、第847条(責任追及等の訴え)

民法 第601条(賃貸借)、第632条(請負)、第643条(委任)、第651条第1項(委任の解除)、第656条(準委任)

判例法理による部分 顧問その他の名称による関与の法的な性質については、契約の解釈によります。個別の事案における適用は、事実関係により異なります。

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