取締役(役員)解任のリスクや手続き方法とは?役員が不当解任された際の対処方法も解説

取締役や役員として会社に尽くしてきたのに、突然「解任」「辞任してほしい」と告げられた。

そんな場面では、多くの方がショックや不安で頭が真っ白になってしまいます。「本当にこんな扱いを受けなければならないのか」「残りの任期分の役員報酬や退職慰労金(役員退職金)はどうなるのか」「会社から渡された辞任届や合意書にサインしてしまってよいのか」と悩まれる方も少なくありません。

任期の途中で正当な理由なく解任された取締役は、残りの任期分の役員報酬を中心とする損害賠償を会社に請求できる可能性があります

一方で、会社から「辞任という形にしてほしい」「円満退任ということで」と求められ、十分に検討しないまま辞任届や合意書にサインしてしまうと、その後に損害賠償を請求することが難しくなる場合があります。

本記事では、役員解任の基本的な法律のルールから、正当な理由がある場合・不当解任になり得る場合の違い、損害賠償と退職慰労金の請求方法、サインを求められたときの対応方法までを、不当解任の問題を扱う弁護士の視点で解説します。

「会社から辞任を求められている」「すでに解任を告げられた」など、お急ぎの方は、まず弁護士法人M&A総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

⇒⇒ 役員解任・強制辞任に関する無料相談はこちら

取締役・役員解任とは?解任と退任・辞任の違い

「役員解任とはそもそも何か?」「退任や辞任との違いは何か?」。ご自身の状況が「解任」「退任」「辞任」のどれに当たるのかを確認していただくことが、この先の損害賠償や対処方法を検討するうえでの出発点になります。

まずは、解任・任期満了退任・辞任の違いを大まかに確認しておきましょう。

区分 主な意味 注意点
解任 会社側の意思決定により、任期途中で役員の地位を失わせること 正当な理由がない場合、損害賠償請求が問題になります
任期満了退任 任期が満了し、役員の地位を退くこと 通常は残存任期分の損害賠償は問題になりません
辞任 役員本人の意思で役員の地位を退くこと 辞任届に署名すると、後から解任を主張しにくくなることがあります

なお、「退任」は広い意味では、任期満了、辞任、解任などにより役員の地位を退くこと全般を指します。本記事では、解任・辞任と区別するため、特に任期満了によって役員の地位を失う場合を「任期満了退任」として説明します。

取締役・役員の解任とは?

会社法上の「役員」とは、取締役・会計参与・監査役を指します。

本記事では、読者の多くが想定する取締役を中心に、これらの役職をまとめて「役員」と呼びます。なお、執行役は指名委員会等設置会社における業務執行機関であり、いわゆる「執行役員」は就業規則上の社内役職にとどまることが多い点には注意が必要です。

「取締役解任」「役員解任」とは、本来の任期がまだ残っているにもかかわらず、株主総会の決議などにより、会社側の意思で任期途中に役員の地位を失わせることをいいます。

会社と役員との関係は、法律上は委任契約またはこれに類する関係です。そのため、役員解任は、会社側が一方的にその委任関係を打ち切る行為であり、会社の経営体制やガバナンスを維持するための重要な仕組みでもあります。経営方針が合わなくなった場合や、新たな経営体制に切り替えたい場合などに、役員の交代手段として用いられます。

他方で、解任される側の役員にとっては、役員としての地位の喪失、役員報酬や退職慰労金(役員退職金)への影響、今後のキャリアや評判への影響など、非常に大きな不利益が生じ得る出来事です。

法律上は、取締役は株主総会で「いつでも解任され得る立場」にありますが、任期途中の解任について正当な理由や適切な手続きが欠ける場合には、会社が損害賠償責任を負う可能性があります。

解任と退任の違い(任期満了退任との違い)

ここでは、任期満了による退任と解任の違いを紹介します。

退任という言葉は、広い意味では、任期満了、辞任、解任などにより役員の地位を退くこと全般を指します。ただし、解任や辞任と区別して説明する場合には、任期満了によって役員の地位を失うことを「任期満了退任」と呼ぶことがあります。

任期満了退任の場合は、もともと定められていた任期の終わりまで役員を務めることが前提です。役員側から見ると、原則として予定どおり任期を終えた形になります。

これに対して、解任は、任期の途中で会社側の判断により役員の地位を失わせるものです。通常は、株主総会で解任が決議された時点で地位を失い、その日から取締役・役員ではなくなります。

本来であれば、任期が終わるまで役員報酬を受け取ることが期待されているところ、会社側の事情などにより途中で役員から外されることになります。

そのため、解任が適切だったかどうかは、役員の生活・キャリアに直結する重大な問題になります。

中には、解任に近い状況でありながら、外向きには「任期満了による退任」と説明されるケースもあります。また、退任の前に任期を短く変更しておき、退任とする方法が取られることもあります。

このような場合には、

  • 元々の任期はいつまでだったのか
  • 任期が途中で変更されていないか
  • 任期の変更や退任の流れに不自然な点がないか

といった点を確認し、「形式上は退任でも、実質的には解任といえないか」が問題となることがあります。

ご自身のケースを考える際には、元の任期、実際に役員でいられた期間、退任に至る経緯を時系列でまとめてみることが、後の判断材料になります。

解任と辞任の違い

続いて、「辞任」と「解任」の違いを紹介します。

会社から「辞任という形にしてほしい」と言われている場合には、とくに注意が必要です。

辞任とは、役員本人の意思で役員の地位を退くことをいいます。実際の運用では、役員本人が辞任届を会社に提出する形が多く用いられます。

ただし、辞任は会社の承諾によって初めて成立するものではありません。原則として、辞任の意思表示が会社に到達したかどうかが重要になります。

これに対して、解任会社側の意思決定によって役員の地位を失わせるものです。役員本人が納得しているかどうかにかかわらず、会社が「解任する」と判断し、必要な手続きがとられれば解任が行われます。

問題になりやすいのは、会社から「解任という形にはしたくないので、辞任にしてほしい」「円満退任ということにしておきましょう」と求められる場面です。

会社としてはトラブルを避けたい、社内外の印象を和らげたいという思いから、辞任や「円満退任」という言葉を使うことがあります。

しかし、実際には会社から強い要請や圧力があり、実質的には会社の判断で役員の地位を手放さざるを得ない状況であるにもかかわらず、形式上は「本人の辞任」として扱われてしまうと、後から「不当な役員解任にあたるのではないか」「残りの任期分の報酬について損害賠償を請求できるのではないか」と主張することが難しくなるおそれがあります。

会社から辞任を強く求められたときには、

  • なぜ辞任という形にしたいのか
  • 今後の待遇(退職慰労金、保有株式の扱いなど)はどうなるのか
  • どのような内容の書面にサインを求められているのか

をよく確認する必要があります。

納得できないまま、その場の雰囲気で辞任届や合意書に署名押印してしまうことは避けたほうが安全です。

取締役(役員)は解任できるのか?

会社法上、取締役を解任するかどうかは、原則として株主総会決議によって決まります。

取締役の解任決議は、会社法341条に定められた要件を満たす必要があります。具体的には、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成によって決議します。ただし、定款で3分の1以上の割合を定めている場合には、その割合以上の株主の出席で足ります。

株主が、会社の経営を任せている取締役の人選を、必要に応じて見直せるようにするためです。この意味で、取締役は「いつでも株主総会で解任され得る立場」にあります。

任期途中で解任が行われた場合には、「解任に「正当な理由」があったのか」「株主総会の開催や議案の内容など、解任に至る手続きが適切だったのか」といった点が問題になります。

一般的には、正当な理由のない任期途中の解任については、会社がその取締役に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

損害としては、

  • 残りの任期の間に受け取れるはずだった役員報酬
  • 条件によっては、退職慰労金(役員退職金)など

が検討対象になります。

また、形式上は「役員解任」という手続がとられていても、解任理由が抽象的で具体性に欠ける場合や株主総会の準備や説明が不十分で、手続きに大きな問題がある、といった事情がある場合には、取締役側から「不当な解任ではないか」として争われることがあります。

「役員 解任」が現実の問題として生じているときには、

  1. 法律上、取締役は株主総会で解任され得る立場にある
  2. ただし、解任理由や手続きに問題がある場合には、会社が損害賠償責任を負う可能性がある

という二点を前提に、ご自身の状況を確認していくことが重要です。

取締役(役員)解任の適切な手続き方法

ここからは、「役員の解任は法律上どのように位置づけられているのか」「会社はどのような手続きを踏むべきか」という全体像を紹介します。ここを押さえておくと、ご自身の解任が適切な流れで行われたのか、どこに問題があり得るのかを判断しやすくなります。

取締役(役員)解任の基本

まずは、役員解任に関する法律上の大枠を確認します。「どの機関が」「どのような考え方で」解任を決めるのかを押さえておくことが重要です。

(1)原則は株主総会でいつでも解任できる

会社法上、取締役は株主総会の決議によっていつでも解任することができるとされています。

これは、会社の経営を任せている取締役に問題が生じた場合や、経営方針を見直したい場合に、株主が人選を柔軟に変更できるようにするための仕組みです。

取締役の解任を決める株主総会の決議は、一般には普通決議と説明されます。ただし、役員の選任・解任については会社法341条に決議要件が定められているため、通常の普通決議と同じ説明だけで済ませるのではなく、同条の要件を確認する必要があります。

具体的には、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の賛成によって決議します。定款で3分の1以上の割合を定めている場合には、その割合以上の株主の出席で足ります。

したがって、「株主総会が開かれた」というだけでは足りません。出席株主の議決権数、賛成票数、定款上の定めを確認することが重要です。

ただし、取締役の解任が常に普通決議で足りるとは限りません。

例えば、累積投票で選任された取締役を任期途中で解任する場合や、種類株式(いわゆる種類株)を発行していて種類株主総会で選任された取締役を解任する場合などでは、普通決議ではなく特別決議が必要になったり、当該種類株主総会での決議が必要になったりすることがあります。

特別決議は、普通決議より賛成要件が重く、一般的には出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要になります。解任の前に、定款と直近の選任の経緯を確認しておくことが大切です。

(2)正当な理由と損害賠償の関係

任期途中の解任は、取締役側にとって大きな不利益となり得ます。そのため、会社法は「いつでも解任できる」という原則を認めつつも、正当な理由のない任期途中の解任については、会社が損害賠償責任を負う可能性があると定めています。

ここでいう「損害」としては、一般的に次のようなものが問題になります。

  • 残りの任期の間に受け取れるはずであった役員報酬
  • 退任時に支給されることが見込まれていた役員退職慰労金(役員退職金)の一部

つまり、「株主総会で解任すること自体」は法律上認められているものの、正当な理由がないのに任期途中で解任した場合には、その結果生じた損害を会社が金銭で補償しなければならないことがあるという構造になっています。

ご自身が任期の途中で解任された場合、まず確認すべきは、解任の時点で残っていた任期の長さです。残りの任期が長ければ長いほど、損害賠償の額も大きくなりやすくなります。会社から「正当な理由がある」と告げられた場合や、議事録に解任理由が書かれていた場合でも、その理由が法律上の正当な理由に該当するかどうかは、別途検討が必要です。

(3)任期の長さと解任リスクの関係

取締役の任期は、会社の種類や定款の定めによって異なります。公開会社では原則として2年、非公開会社では定款で定めることにより最長10年まで任期を伸ばすことができます。任期が長いほど、任期途中で解任した場合の損害賠償の金額も大きくなりやすくなります。

  • 任期があと1年残っている取締役を解任する場合
  • 任期があと5年残っている取締役を解任する場合

を比べると、後者の方が残りの任期分の役員報酬が多くなる分、損害額も大きくなりやすいと考えられます。

ご自身のケースを考える際には、

  • 元々の任期が何年であったのか?
  • 解任が行われた時点で任期がどれくらい残っていたのか?

といった点を確認しておくことが、損害賠償の可能性を検討するうえでも有効です。

取締役(役員)の解任を決めるための社内手続き

次に、「会社の中でどのような流れで解任が決まるのか」という視点から確認していきます。

(1)まず確認したい会社の基本情報

役員解任の流れを考えるときは、最初に会社の基本的な仕組みを確認することが重要です。

例えば、

  • 取締役会設置会社かどうか
  • 代表取締役は取締役会で選定されているのか、株主総会で選任されているのか
  • 定款で役員の任期や解任に関して特別な定めがあるか

といった点です。

とくに取締役会設置会社の場合、株主総会(臨時株主総会を含みます)を招集すること自体を取締役会で決めるのが通常です。取締役会の決定があいまいなまま株主総会が進んでいると、後から「適切な手続きだったのか」が争点になり得ます。

取締役会の決議は、定款に別段の定めがない限り、取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数の賛成で成立します。

なお、代表取締役の解職を取締役会で決議する場合には、解職対象となる代表取締役は、特別利害関係取締役として議決に加われないと解されています。

一方、取締役そのものの解任は株主総会の権限です。取締役会では、株主総会の招集や解任議案の付議を決定する場面が問題になります。この場合も、解任対象となる取締役の関与が手続上の争点となることがあるため、取締役会議事録や招集手続の内容を確認することが重要です。

取締役会議事録は、解任の前提として「誰が」「いつ」「どの議題を」「どのように決めたか」を示す資料ですので、内容を確認しておくことが大切です。

これらによって、

  • 取締役の解任を決める株主総会の準備を誰が行うのか
  • 代表取締役の解職を決める取締役会をどのように開くのか

といった具体的な流れが変わってきます。

(2)役員解任を検討する際の流れ

取締役の解任が議論されるとき、取締役会設置会社では、会社内部ではおおむね次のようなステップをたどることが多いです。

  1. 経営陣や主要株主の間で、解任の必要性について協議が始まる
  2. 解任理由や必要性を確認し、株主総会に付議するかどうかを取締役会などで判断する
  3. 株主総会の招集通知を発し、「当該取締役の解任」を議題として記載して株主に通知する
  4. 株主総会で解任の可否を決議し、株主総会議事録などに決議内容を記録として残す
  5. 解任が成立した場合、役員変更登記を申請する(原則として変更の日から2週間以内)

株主総会の招集通知は、会社の種類によって期限が異なります。公開会社では原則として 株主総会の日の2週間前まで に招集通知を発する必要があります。公開会社でない会社(いわゆる非公開会社)では 1週間前まで で足りますが、取締役会を置かない会社では定款でさらに短い期間を定めていることがあります。また、書面や電磁的方法による議決権行使を認める場合は、非公開会社でも2週間前までに招集通知を発する必要があります。

招集通知には、解任の対象となる取締役の氏名と、取締役の解任を決議することを 目的事項(議題)として明記します。招集通知に解任の議題がないのに当日になって突然解任が持ち出されるような進め方は、手続き面の問題として争われやすくなります。

また、解任によって取締役の人数が法令や定款の最低人数を下回ると、会社としての体制に支障が出ることがあります。取締役会設置会社は取締役が3名以上必要ですので、解任と同じ株主総会で後任取締役を選任するなど、欠員が生じない形になっているかも確認しておくとよいです。

解任が成立すると、取締役の氏名は登記事項として変更されます。会社は原則として 変更の日から2週間以内 に役員変更登記の申請を行う必要があり、登記が済むと登記事項証明書にも反映されます。

ご自身が解任された場合には、ここで紹介した手続きが正しく踏まれていたかどうかが、後の対応に直結します。例えば、招集通知が法定の期限よりも遅れて発送されていた場合や、招集通知に「取締役の解任」が議題として明記されていなかった場合などには、株主総会決議の取消しの訴えを提起できる可能性があります。

ただし、株主総会決議取消しの訴えは、原則として決議の日から3か月以内に提起する必要があります。期間を過ぎると、手続上の問題を理由に決議取消しを求めることが難しくなるため、解任決議に疑問がある場合には早めの確認が必要です。

解任が決まった後は、株主総会議事録の内容を確認し、招集通知の発送日付、議題の記載、出席株主の議決権数、賛成票の数などを確認してください。株主であれば、会社法318条4項に基づき、株主総会議事録の閲覧・謄写を請求できます。

株式を保有していない取締役の場合には、当然に同じ請求ができるとは限りません。その場合は、会社への任意開示の申入れや、法的手続の中での証拠収集を検討することになります。

(3)誰が解任を決めたのかを意識する

ご自身が解任された、あるいは解任されそうな場合には、次のような点を意識しておくとよいです。

  • 解任の話を最初に切り出したのは誰か
  • 実際に取締役の解任を決めたのは株主総会なのか、代表取締役の解職を決めたのは取締役会なのか
  • その決定に至るまでの話し合いが、どのような会議体・どのような手順で行われたのか

これらは、後で「手続きに問題がなかったか」「誰を相手にどのような法的手段を検討すべきか」を考えるうえで、大切な情報になります。

取締役(役員)の解任にあたって準備すること

役員解任が検討されている場面では、会社側にも役員側にも、多くの書類や記録が関係してきます。ここでは、特にポイントとなりやすいものを確認していきます。

(1)会社側で用意されることが多いもの

会社側では、役員解任に向けて、次のような資料や記録が作られることがあります。

  • 解任を検討する際の説明資料や社内メモ
  • 解任理由や問題点をまとめた内部資料
  • 会議での説明内容のレジュメやプレゼン資料

これらは、会社側が「なぜ解任する必要があると考えたのか」を示す材料になります。

(2)解任を決めたことを示す記録

解任を最終的に決めたときには、その内容が何らかの形で記録として残されるのが通常です。例えば、

  • 会議の議事録
  • 決定内容をまとめた文書
  • 決定通知や社内告知文

などがあります。

こうした記録は、後から「どのような理由で、どのような手続きで解任が行われたのか」を確認するための重要な手がかりになります。

(3)役員本人に対する通知・説明の文書

会社が役員解任を行うとき、役員本人に対して何らかの形で通知や説明が行われることが多いです。例えば、

  • 解任の理由や時期を記載した書面(解任通知書など)
  • メールで送られてきた解任の連絡
  • 「辞任を求める」趣旨の文書

といったものです。

なお、役員本人への通知や説明は、解任の成立そのものの要件ではありません。ただ、後から「解任がいつ決まったのか」「どのような理由が示されていたのか」が争点になることもあるため、日付や内容が分かる形で通知書を交付するなど、記録が残る形になっているかを確認しておくと安心です。

こうした文書は、役員側から見ても非常に重要です。

「どのような理由が示されているのか」「どのような経緯で解任が伝えられたのか」が、後の判断材料になりますので、受け取った書類やメールは削除せず、必ず保管しておくことをおすすめします。

手続きの不備があるとどうなるか?

最後に、「解任の手続きに問題があった場合に、どのようなことが起こり得るか」を確認します。役員として会社の対応に疑問を感じている方にとって、重要なポイントです。

(1)手続きの流れに大きな問題があるケース

例えば、次のような場合には、解任の手続きに大きな問題があると評価されることがあります。

  • 本来必要とされる株主総会決議や取締役会決議を経ていない
  • 招集通知や議題の記載と、実際に決められた内容が大きく異なる
  • 形式的な議事録はあるものの、実際には十分な審議や説明が行われていない

こうした場合、解任の有効性そのものや、後に行う損害賠償請求の範囲に影響を与える可能性があります。とくに、株主総会での解任決議に重大な手続き上の瑕疵があるときには、その決議自体が争点となります。

(2)手続きの問題と決議の効力・損害賠償の関係

手続きに問題があるからといって、常に解任が無効になるとは限りません。ただし、手続きが極端に不適切であったり、役員にとって著しく不公平な形で進められていたりする場合には、

  • 株主総会決議の取消しを求めることができる可能性
  • 場合によっては、決議の不存在・無効を主張する余地
  • 少なくとも損害賠償の額や責任の有無に有利な事情として考慮される可能性

などが出てきます。会社法上は、一定の要件のもとで株主総会決議の取消しや不存在・無効の確認を求める制度が用意されており、解任決議もその対象となり得ます。

(3)会社・役員の双方にとって適切な手続きが重要

適切な手続きを踏むことは、役員の権利を守るために重要であるだけでなく、会社にとっても、自らの決定を正当に説明するために欠かせません。

  • 会社側にとっては、後からトラブルになったときに「正当な理由と適切な手続きに基づいて解任を行った」と説明しやすくなる
  • 役員側にとっては、自分がどのようなプロセスで解任されたのかを確認し、不当な点があれば決議の効力や損害賠償の有無を争うための材料になる

という両面があります。

ご自身の解任について「納得できない」「おかしいのではないか」と感じている場合には、解任理由の内容だけでなく、「どのような株主総会・取締役会が開かれ、どのような手順で、どのように伝えられたか」という手続き面にも目を向けて確認しておくことが重要です。

招集通知の日付、議題の記載、議事録の内容、賛成株主の議決権比率、議事の進行内容など、後の対応を検討するうえで必要になる事実が、ここに含まれています。会社側に対し、関係する書類のコピーを早めに請求しておくことを強くおすすめします。

正当な理由がある取締役(役員)解任/不当解任になり得るケース

次は「どのような場合に役員解任の正当な理由があるといえるのか」「逆に、不当解任と争われやすいのはどのようなケースか」を確認していきます。

「正当な理由」をめぐる近時の裁判例の傾向

「正当な理由」が認められるかどうかは、会社法339条2項に明確な定義があるわけではなく、過去の裁判例の積み重ねによって判断基準が形成されてきました。近時の裁判例には、ご自身のケースを考えるうえで参考になる傾向がいくつかあります。

(1)「客観的な事情」が求められる

会社法339条2項の「正当な理由」とは、単に株主や経営陣と意見が合わないというだけでは足りず、取締役として職務の執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない、客観的・合理的な事情をいいます。

典型例としては、職務執行上の法令違反や定款違反、心身の故障、職務への著しい不適任などが挙げられます。会社側の主観的な評価や、株主との単なる意見の相違だけでは、正当な理由として十分とはいえない場合があります。

(2)単独の事実では足りなくても、総合勘案で認められる場合がある

近時の裁判例には、個別の事実を一つずつ取り出すと正当な理由とまでは言い切れないものの、複数の事情を総合勘案して「取締役として著しく不適任」と判断された事案があります(東京高裁平成30年10月4日判決ウエストロー2018WLJPCA10046008、その原審である東京地裁平成30年3月29日判決判例タイムズ1475号214頁/金融・商事判例1547号42頁)。

この事案では、会社側が主張した個々の事実を単独で取り出すと、それぞれは解任の正当な理由とまではいえないものとされながらも、それらを総合勘案すれば、当該取締役は取締役として著しく不適任であるとされてもやむを得ないとして、解任に正当な理由が認められました。

ご自身のケースで会社側から複数の問題を指摘されている場合、「それぞれは大したことではない」と感じられるかもしれませんが、裁判所は全体としての評価を行うため、油断はできません。指摘されている事実一つひとつについて、丁寧に事実関係を確認することが重要です。

(3)解任時点で客観的に存在していれば足りる

上記の事案では、「正当な理由」の根拠となる事情は、解任の時点で客観的に存在していれば足りるとされており、会社が解任時点でその事情を解任理由として明確に意識していたかどうかは問われないとされました。

つまり、会社側が後から別の理由を持ち出してきたとしても、その事実が解任時点で実際に存在していたのであれば、正当な理由として認められる余地があります。逆に、会社が後付けで持ち出してきた事情が解任時点ではまだ存在していなかったことを示せれば、損害賠償の主張に有利に働く可能性があります。

(4)「正当な理由」の立証責任は会社側にある

損害賠償の場面では、解任に「正当な理由」があったことの立証責任は、原則として会社側が負うと理解されています。会社側が「正当な理由があった」と主張するだけでは足りず、それを示す具体的な事実と証拠を提出しなければなりません。

ご自身が解任された側として損害賠償を請求する場合、すべてを完璧に立証する必要があるわけではなく、まずは「任期途中の解任があったこと」「その時点で残っていた任期と役員報酬の額」を示すことから始まります。「正当な理由」を打ち消す主張・立証は、会社側の主張の中身を見ながら検討していく形になります。

正当な理由とされやすい典型的な役員解任理由

ここからは、上で触れた判断基準を踏まえて、一般的に「正当な理由がある」と評価されやすい典型例を確認していきます。これらに当てはまる事情があれば直ちに解任が有効になるというものではなく、最終的には個別事情の総合判断になりますが、裁判例で会社側が正当な理由として主張しやすい代表的なパターンです。

(1)法令違反・背任・横領などの不正行為

もっとも典型的なのが、役員による不正行為です。

例えば、

  • 会社の資金や資産を私的に流用した
  • 架空取引・粉飾決算など、財務に関する不正行為を主導した
  • 独占禁止法や金融商品取引法など、重要な法令に違反する取引を推進した

といったケースです。

このような場合、会社は「会社に重大な損害を与えた」「会社の信用を著しく失墜させた」として、解任の正当な理由があると主張しやすくなります。

他方で、会社から不正行為を指摘されたとしても、指摘されている行為が事実として本当に存在するのか、事実関係に誤解や誇張が含まれていないか、同種の行為について他の役員との間で責任の分担がどうなっているかといった点を丁寧に検証することが重要です。

(2)著しい職務不適任・業務遂行能力の欠如

役員として求められる職務を十分に果たしていないと評価される場合も、正当な理由があるとされることがあります。

例えば、

  • 極端に業務の遂行が遅く、重要案件の決裁や対応が滞っている
  • 重大な判断ミスを繰り返し、その結果会社に多額の損失が生じている
  • 取締役会への報告や情報共有義務を怠り続け、経営判断に支障が生じている

といったケースです。

このケースで重要になるのは、「一度のミスがあったかどうか」ではなく、問題点を指摘された後も改善が見られないこと、他の役員と比較しても、著しく不適切な状態が継続しているといった事情がどの程度存在するかです。単なる能力不足や評価の相違だけでは足りず、会社の経営に支障を生じさせる程度にまで達しているかどうかが争点になります。

(3)健康上の問題により職務の継続が難しいケース

役員本人の健康状態の悪化により、職務を継続することが難しくなる場合もあります。

例えば、

  • 長期間の入院や療養が必要で、取締役会への出席や意思決定への関与がほとんどできない状態が続いている
  • 判断能力や記憶力に継続的な障害が生じており、経営判断に重大な支障がある

といったケースです。

このような場合、会社としては本人の健康に配慮しながら、まずは職務軽減や一時的な代行などの選択肢を検討すべき場面もありますが、それでもなお会社の経営を適切に行うことが難しいと判断される場合には、役員構成の見直しとして解任が検討されることがあります。

不当解任と争われやすい取締役(役員)解任のケース

次に、「会社が解任の理由だと主張しているものの、そのままでは正当な理由があるとはいえないのではないか」と争われやすいケースを見ていきます。

ここに当てはまる場合は、不当解任かどうかを検討する余地があると考えられます。

(1)経営方針の違い・人間関係の悪化のみを理由とする解任

よくあるパターンの一つが、「経営方針の違い」や「人間関係の悪化」を理由とする解任です。

例えば、

  • 社長や他の役員と考え方が合わない
  • 議論の場で対立することが多く、「扱いづらい」と見られている
  • 新しい経営体制への移行にともない、特定の役員だけを外したい

といった事情が背景にあるケースです。

経営方針の違いや人間関係の問題そのものは、会社の運営に影響を与えることがありますが、だからといって直ちに「正当な理由がある」とはいえない場合があります。

会社側が表向きには「経営方針の違い」と説明しつつ、実際には特定の株主の意向を通すためや、内部の権力争いの結果として排除したいだけといった事情があるとすれば、不当解任かどうかを慎重に検討する必要があります。

(2)一時的な業績悪化を一方的に責任追及する解任

業績が悪化したことを理由に、特定の役員だけを解任しようとするケースもあります。しかし、業績悪化はさまざまな要因が絡み合って生じるものであり、ただちに一人の役員だけの責任といえるとは限りません。

次のような点を確認することが重要です。

  • 業績悪化の主な原因は何なのか
  • その役員だけに責任を負わせるのが公平といえるのか
  • 他の役員にも同程度の責任があるのではないか

これらを無視して「業績が悪いから」「株主からの印象が悪くなるから」という理由だけで解任する場合には、正当な理由があるとはいえない可能性があります。

(3)説明があいまいなまま進められる解任

会社からの説明が、「総合的に判断した結果です」「信頼関係が失われたと判断しました」といった非常に抽象的なものにとどまり、具体的な事実や出来事が示されないまま解任が進められることもあります。

解任の理由があいまいなまま話が進んでいる場合は、その時点で一度立ち止まり、具体的にどのような行為や結果が問題とされているのか、それはいつ、どのような形で起きたのかを書面やメールで説明してもらうことが重要です。

ただし、会社が解任理由を十分に説明していないからといって、直ちに解任が無効になるわけではありません。会社法上は、株主総会の決議が成立すれば、解任理由の示し方にかかわらず解任自体は成立し得ます。

もっとも、理由が抽象的なままだと、会社側が後から「正当な理由があった」と説明する場面で根拠が乏しくなりやすく、損害賠償の有無や金額の判断で不利に働くことがあります。

任期短縮や役職変更を利用した「実質的な解任」のケース

最後に、形式上は解任ではないものの、実質的には解任とほとんど変わらないケースを見ていきます。表向きの説明と、役員が受ける不利益の大きさとの間にギャップが生じやすい場面です。

(1)定款変更による任期短縮を利用した退任

もともと任期が数年あった取締役について、途中で定款変更を行い、取締役の任期を大幅に短縮する。短縮後の任期満了を理由に「任期満了退任」として処理する。という方法がとられる場合があります。

定款変更自体は株主総会の特別決議により認められる手続ですが、その結果として特定の取締役だけが予定より大幅に早く退任させられているようなときには、なぜそのタイミングで任期を短縮したのかや、任期短縮の必要性が客観的に説明できるのかといった点を慎重に確認する必要があります。

事情によっては、任期途中の解任と実質的に同視できるとして、任期途中解任の場合と同様に損害賠償を求める余地が検討されることもあります。

(2)代表取締役の解職や権限縮小が問題になるケース

代表取締役の地位を外される「解職」と、取締役の地位そのものを失う「解任」は区別して考える必要があります。代表取締役を解職されても、取締役としての地位が残る場合には、直ちに会社法339条2項の「解任」と同じ問題になるとは限りません。

ただし、次のような事情が重なる場合には、解職や権限縮小にとどまらず、退任条件や報酬、委任契約上の問題として検討すべきことがあります。

  • 代表権を外された
  • 業務権限を大幅に制限された
  • 重要会議から外された
  • 情報共有を受けられなくなった
  • 辞任を強く求められた

このような場合には、取締役としての地位が形式上残っているかだけでなく、報酬の減額、業務権限の変更、辞任を求められた経緯などを含めて確認する必要があります。

(3)形式は辞任・退任、実質は解任というケース

会社から「辞任という形にしてほしい」「円満退任としたい」と強く求められ、やむを得ず辞任届を提出したものの、実際には会社から強い圧力や説得があったケースや辞任以外の選択肢が事実上提示されていなかったという場合には、形式上は辞任・退任であっても、実質的には解任と同じではないかという問題が生じます。

このようなケースでは、

  • 辞任を求められた具体的な経緯(会話内容やメールのやり取り)
  • 辞任に応じなかった場合にどのような扱いになると言われていたのか
  • 辞任を選ばざるを得なかった事情

をできるかぎり資料やメモでまとめたうえで、不当な役員解任に当たらないかを検討していくことが重要です。

取締役(役員)を解任された場合の損害賠償・退職慰労金

ここでは、取締役や役員が解任された場合に「お金の面」「今後の生活やキャリアの面」でどのような影響が出るのかを紹介します。

とくに、正当な理由のない役員解任と損害賠償、退職慰労金の扱い、役員兼従業員の方の注意点を中心に説明します。

正当な理由のない役員解任と損害賠償請求

役員解任には、正当な理由がある場合と、そうとはいえない場合があります。ここでは、特に正当な理由がない任期途中の役員解任と損害賠償の関係について確認していきます。

(1)正当な理由がない解任と損害賠償の基本的な考え方

会社法上、取締役は株主総会の決議によりいつでも解任することができますが、任期途中で正当な理由なく解任された場合には、会社がその取締役に対して損害賠償責任を負う可能性があります。ここでいう損害とは、簡単にいえば「本来の任期満了まで取締役として在任していれば得られたはずの利益が失われた部分」です。

典型的には、次のような項目が検討されます。

  • 残りの任期の間に受け取れるはずであった月額の役員報酬の合計額
  • 退任時に支給されることが見込まれていた役員退職慰労金(役員退職金)の一部

いくらまでが損害として認められるかは、会社との契約内容、これまでの支給実績、解任に至る経緯などによって変わります。実際にどの程度の金額を請求し得るかは、個別の事情を前提とした検討が必要です。

(2)損害として問題になることが多い項目

損害として主張されることが多いのは、次のような項目です。

  • 月額の役員報酬 × 解任時点で残っていた任期の月数
  • 一定の条件を満たした場合に支給されることが予定されていた退職慰労金のうち、支給される蓋然性が高かった部分
  • ストックオプションや業績連動報酬など、解任されなければ相当程度の見込みで受け取れたと考えられる報酬

役員報酬のほかに、役員賞与(いわゆるボーナス)や業績連動報酬がある場合、損害に含められるかどうかは、その支給がどれだけ確実だったかで結論が変わります。

毎期の株主総会決議や報酬規程で支給基準・算定方法が定まっていて、過去も継続して支給されているような場合は、解任されなければ受け取れた可能性が高いとして主張しやすくなります。

一方で、会社の裁量で金額が決まり、支給自体が確定していない賞与については、損害として認められにくいことがあります。

ただし、将来の報酬や退職慰労金については、「必ず支払われた」とまではいえない性質もあります。そのため、どこまでを損害として評価できるかについては、支給の条件、会社の業績、過去の運用実績などを踏まえた慎重な判断が必要になります。

(3)損害賠償請求を検討する際のポイント

損害賠償請求を検討する際には、次のような点をまとめておくと見通しを立てやすくなります。

  • 元々の任期と、解任された時点での残りの期間
  • 月額の役員報酬や賞与、業績連動報酬の決め方
  • 退職慰労金などが定款・株主総会決議・社内規程でどのように定められているか
  • 解任理由や手続きに、正当な理由の有無や手続き上の問題がないかどうか

取締役を解任されたら経済的にどのような影響が出るのかを考えるときには、感情的な納得感だけでなく、具体的な項目を一つずつ確認し、どの範囲まで損害として主張できる可能性があるのかを見ていくことが重要です。

損害賠償額の目安(ケース別の具体例)

会社法339条2項に基づく損害賠償の額は、ご自身の任期・報酬・退職慰労金規程の内容によって大きく異なります。以下、典型的な5つのケースで、損害賠償額の目安を見ていきます。

なお、以下のケースは、損害賠償の構造を理解いただくための仮定の計算例であり、特定の事案で同水準の損害賠償が認められることを保証するものではありません。実際の損害認容額は、解任に正当な理由があるかどうか、退職慰労金の支給見込みの確実性、賞与・業績連動報酬の確定性、過失相殺の有無など、多くの個別事情によって変動します。

ケース1:公開会社・残存任期1年・月額50万円

  • 会社の種類:公開会社(任期2年)
  • 解任時点で残っていた任期:1年(12ヶ月)
  • 月額の役員報酬:50万円

このケースで、残りの任期分の役員報酬として主張できる金額の目安は、

50万円 × 12ヶ月 = 600万円

となります。退職慰労金が支給される蓋然性が高かった場合には、その分が上乗せされる可能性があります。

ケース2:公開会社・残存任期1年・月額100万円

  • 会社の種類:公開会社(任期2年)
  • 解任時点で残っていた任期:1年(12ヶ月)
  • 月額の役員報酬:100万円

このケースでは、

100万円 × 12ヶ月 = 1,200万円

が、残存任期分の役員報酬として主張し得る目安となります。

ケース3:非公開会社・残存任期3年・月額80万円

  • 会社の種類:非公開会社(任期5年・定款で定めた場合)
  • 解任時点で残っていた任期:3年(36ヶ月)
  • 月額の役員報酬:80万円

このケースでは、

80万円 × 36ヶ月 = 2,880万円

が、残存任期分の役員報酬として主張し得る目安となります。

ケース4:非公開会社・残存任期8年・月額150万円

  • 会社の種類:非公開会社(任期10年・定款で定めた場合)
  • 解任時点で残っていた任期:8年(96ヶ月)
  • 月額の役員報酬:150万円

このケースでは、

150万円 × 96ヶ月 = 1億4,400万円

が、残存任期分の役員報酬として主張し得る目安となります。

非公開会社(株式の譲渡制限が付されている会社)では、定款で取締役の任期を最長10年まで延長することができます(会社法332条2項)。実際の裁判例にも、残存任期が8年を超える長期にわたる賠償額が認められた事案があります。中小企業・同族企業で長期任期を定款で定めていた取締役が解任されたケースでは、損害賠償額が1億円を超える水準になり得る点に注意が必要です。

ケース5:ケース3に退職慰労金が損害として認められた場合

ケース3の状況に加えて、

  • 在任期間:10年
  • 退職慰労金規程上、退任時に支給される予定だった額:1,200万円

退職慰労金(役員退職金)が支給される蓋然性が高い場合、損害賠償の対象に含められる余地があります。

このケースの合計は、

残存任期分の役員報酬 2,880万円 + 退職慰労金 1,200万円 = 合計 4,080万円

となる可能性があります。

シミュレーションを踏まえて押さえておきたい点

以上のシミュレーションは、あくまで目安です。実際の裁判では、

  • 役員報酬の支給状況(過去の支給実績・株主総会決議の内容)
  • 退職慰労金規程の有無と運用実績
  • 業績連動報酬や賞与の確定性
  • 解任に「正当な理由」があったかどうか

などをもとに、具体的な金額が判断されます。

しかし、これらの数字を見ていただくとお分かりのとおり、任期途中の役員解任で問題となる金額は、数百万円から億単位にまで及び得る重要な問題です。会社から提示された退職金額や和解金額が、本来主張できる損害賠償額と比べてどの程度の水準にあるのかを、必ず弁護士に確認することをおすすめします。

「自分のケースではいくら請求できるのか知りたい」という方は、当事務所までご相談ください。

⇒⇒ 役員解任の損害賠償について相談する

役員解任で退職慰労金(役員退職金)はもらえない?

ここでは、役員の退職慰労金(役員退職金)がどのような仕組みで決められるのか、減額や不支給が問題になる典型的な場面を確認していきます。

(1)役員退職慰労金の基本的な位置づけ

役員の退職慰労金は、在職中の職務執行の対価として支給されるものである限り、会社法361条1項の「報酬等」に含まれると考えられています。そのため、定款に具体的な定めがない場合には、原則として株主総会決議によって支給の有無、金額、算定方法などを定める必要があります。

株主総会で「退職慰労金の具体的な金額は取締役会に一任する」といった決議を行い、その範囲内で具体的な金額を取締役会が決定する運用も見られます。ただし、退職慰労金規程があるだけで、当然に具体的な請求権が発生するとは限りません。

金額を検討する際には、在任期間、役職の重さ、会社への貢献度、会社の業績、過去の支給実績などが総合的に考慮されます。

そのため、退職慰労金が支給されるかどうか、いくら支給されるかは、

  • 定款や株主総会決議・取締役会決議の内容
  • 会社の退職慰労金規程や過去の支給実績
  • 退任・解任に至った事情

といった要素を踏まえて判断されます。「解任だから必ずゼロになる」というものではありません。

(2)不祥事や重い責任を理由とする減額・不支給

役員解任の理由が、不祥事や重大な義務違反に関するものである場合、会社が退職慰労金の減額や不支給を主張してくることがあります。例えば、「横領や背任などの不正行為があったとされている」「重大なコンプライアンス違反に関与したとされている」といったケースです。

会社が「不祥事だから全額不支給とする」と一方的に決めれば常に許されるわけではありません。不正行為等が客観的事実として存在するのか、その行為の内容や結果が退職慰労金を減額・不支給とするほどのものか、減額の程度が過度ではないかといった点が問題になります。

事案によっては、一部減額にとどまるべき場合や、不支給までは認められないと評価される場合もあります。

退職慰労金の請求は、当法人の関連サイト「役員退職慰労金請求なら」でも詳しく解説しています。

⇒⇒ 役員退職慰労金請求の専門サイトはこちら

役員兼従業員の場合の注意点(解任と解雇の違い)

取締役などの役員であると同時に、従業員としての立場も持っている方も少なくありません。いわゆる「使用人兼務役員」の場合、役員としての解任と、従業員としての解雇は別々の法律関係として扱う必要があります。

(1)役員としての地位と従業員としての身分は別

役員としての地位は、会社法上の機関としての地位に基づくものです。他方、従業員としての身分は、労働契約に基づく「労働者」としての地位です。

そのため、

  • 取締役としては株主総会の決議により解任されたが、従業員としての雇用は継続している
  • 取締役の解任と同時に、従業員としても解雇された

といった複数のパターンがあり得ます。役員解任の話が出たときには、問題となっているのは役員としての立場だけなのか?従業員としての雇用契約も終了させる意図があるのか?を明確に確認しておくことが重要です。

(2)従業員としての解雇には労働法上の制限がある

従業員としての解雇には、労働基準法や労働契約法など、労働者保護の観点から厳しい制限があります。特に、労働契約法16条は、解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には無効」と定めています。

そのため、取締役としての解任が会社法上は有効と評価される場合でも、同時に行われた従業員としての解雇が有効と認められるとは限りません。役員解任と同時に解雇を告げられた場合には、役員の問題と従業員の問題を切り分けて、それぞれの法律に従って検討することが必要です。

(3)役員兼従業員の方が確認しておきたいポイント

役員兼従業員の方は、今後の選択肢を検討するために、次のような点を確認しておくとよいです。

  • 役員としての報酬と、従業員としての給与がどのような根拠で決められていたか
  • 役員としての地位が終了した後も、従業員として働き続ける選択肢があるのか
  • 従業員としての解雇理由が、労働契約法16条などの要件を満たすといえるのか

役員解任と従業員の解雇が同時に進められると、状況は複雑になりやすくなります。早い段階で、役員としての立場と従業員としての立場を分けて確認し、必要に応じて専門家に相談することが望ましい場面も多くあります。

損害賠償金の税務上の取扱い

任期途中で正当な理由なく解任された取締役が、会社から会社法339条2項に基づく損害賠償金の支払いを受けた場合、その損害賠償金は税務上「一時所得」とされる場合があります。

もっとも、和解金の名目や内訳によって税務上の区分が変わることがあるため、ご自身の手取り額を考えるうえでは、支払名目と和解書面の文言を慎重に確認する必要があります。

(1)損害賠償金は給与所得ではない

会社法339条2項に基づく損害賠償金は、解任後にその役員が職務を遂行した対価ではなく、解任によって生じた逸失利益の賠償として支払われるものです。そのため、文書回答事例では、役員報酬としての性質は認められず、給与所得には該当しないとされています。

この場合、会社側で源泉徴収を行う必要はありません。受け取る側も、給与所得としてではなく、一時所得として確定申告することになります。

ただし、会社から支払われる金銭の中に、未払役員報酬、退職慰労金、その他の解決金が含まれている場合には、税務上の区分が変わることがあります。支払名目が「和解金」とされている場合でも、内容によって一時所得、給与所得、退職所得などの判断が分かれる可能性があります。

(2)一時所得として計算するメリット

一時所得は、税金の計算上、

  • 50万円の特別控除がある
  • 控除後の金額の2分の1だけが課税対象になる

という性質があります。

例えば、損害賠償金として2,000万円を受け取った場合、課税対象となる金額は、

(2,000万円 − 50万円)× 1/2 = 975万円

となります。給与所得として扱われた場合と比較すると、課税対象の額が大きく変わってきます。

(3)会社との和解金の名目に注意する

会社との交渉の中で、和解金として支払いを受けるケースもあります。和解金の名目(解任の損害賠償か、退職慰労金か、解決金か)によって、税務上の取扱いが変わる場合があります。

  • 損害賠償金として支払われた場合:原則として一時所得
  • 退職慰労金として支払われた場合:原則として退職所得として扱われ、勤続年数等に応じた退職所得控除の適用が検討されます
  • 名目が不明確な場合:給与所得・一時所得・退職所得のいずれかに区分される可能性があり、税務署の個別の判断が必要

和解書面の文言ひとつで、最終的な手取り額が大きく変わることがあります。

なお、税務上の取扱いは、和解の経緯、金額、規程の定め、契約書の文言など複数の要素で結論が変わります。具体的な税務処理は、必ず税理士または所轄税務署にご確認ください。

不当な取締役・役員解任かどうかを判断するポイント

「自分のケースは不当な役員解任にあたるのか」を検討する際に、どのような点を確認すべきかをチェックリストの形で紹介します。

解任の理由だけでなく、「どのような経緯で」「どのような手続きで」進んだのかも含めて見ていくことが大切です。

手続き面のチェック(解任決定のプロセス)

まずは、解任がどのような流れで決められたのかという「手続き面」を確認します。
理由の是非だけでなく、プロセスに大きな問題がないかどうかも、不当解任かどうかを判断するうえで重要な材料になります。

(1)どのような場で、誰が解任を決めたのか

次のような点を一つずつ振り返ってみてください。

  • 解任の話を最初に切り出したのは誰か
  • どのような場(会議・面談・メールなど)で解任の話が出たのか
  • 最終的に解任を決めたのは誰(どの立場・どの機関)か

「気づいたらもう決まっていた」「誰が本当に決めたのかよく分からない」という場合には、手続き面に問題が潜んでいる可能性があります。

(2)説明や話し合いの機会があったか

解任に至るまでに、次のような機会があったかどうかも確認してみましょう。

  • 事前に問題点を指摘され、説明を求められたか
  • 自分の考えや弁明を伝える場があったか
  • 意見の違いについて、冷静な話し合いの場が設けられたか

なお、取締役の解任は、労働者の懲戒解雇とは異なります。事前の注意や指導、弁明の機会が常に法律上の要件になるわけではありません。

ただし、会社が「職務不適任」や「重大な問題行為」を正当な理由として主張する場合には、過去にどのような注意、指導、改善要求があったかが重要な事情になります。突然解任を告げられた場合には、会社が以前から問題を認識していたのか、改善の機会を与えていたのかを確認することが大切です。
もし、いきなり「もう辞任してほしい」「解任することにした」と告げられたり、詳しい理由の説明もないまま、一方的に書類への署名を求められたというような場合には、手続きがあまりにも一方的である可能性があります。

(3)決定の内容が記録として残っているか

解任の決定は、通常、何らかの形で記録に残されます。
次のようなものがあるかどうかを確認してみてください。

  • 会議の議事録やメモ
  • 解任を知らせる通知文書やメール
  • 社内向けの説明資料

もし「口頭でしか聞いていない」「書面は一切もらっていない」という場合には、後から事実関係を確認することが難しくなります。
可能であれば、解任の日時や内容が分かる記録(メールの履歴やメモなど)を、ご自身でも残しておくことが大切です。

(4)株主総会・取締役会の「形式」が整っているか

「解任が決まった」と言われていても、株主総会や取締役会の形式が整っていないと、決議の効力が争点になることがあります。次の点を一つずつ確認してみてください。

  • 株主総会の招集通知は届いていたか、通知日と開催日の間隔は十分か
  • 招集通知の議題に「取締役の解任」が明記されていたか
  • 株主総会で 普通決議 の前提(出席状況と賛成票数)が整っていたか
  • 取締役会設置会社の場合、株主総会の招集を取締役会で決めているか、取締役会議事録が残っているか
  • 解任後に登記がされているか(登記事項証明書で確認できます)

これらの点があいまいなまま進んでいる場合は、解任理由とは別に、手続き面に問題が潜んでいる可能性があります。

解任理由のチェック(役員解任理由の妥当性)

次に、会社が主張している解任理由の内容を確認します。
「納得できない」という感情だけでなく、理由自体が法律上の「正当な理由」といえるかどうかの観点から確認することが大切です。

(1)解任理由は具体的に示されているか

まずは、解任理由がどの程度具体的に説明されているかを確認します。

  • いつ、どのような行為が問題だったのか
  • どのような結果や損害が生じたとされているのか
  • 誰が、どのような点を問題視しているのか

がはっきりしているでしょうか。

「総合的な判断です」「信頼関係が失われました」といった抽象的な表現だけでは、正当な理由があるのかどうかを判断することは困難です。

(2)過去に注意・指導・改善要求があったか

何か問題があると言われているのであれば、その前に次のような対応があったかどうかも重要です。

  • 問題点について、具体的な注意や指導を受けていたか
  • 改善や再発防止を求められ、それに対応する機会が与えられていたか
  • 他の役員に対しても同じような基準が適用されているか

もし、これまで特に注意や警告を受けたことがなかったのに、いきなり「重大な問題」として解任まで進んでいるのであれば、その事情が本当に正当な理由に当たるのかを慎重に検討する必要があります。

ただし、事前の注意や警告がないことだけで、直ちに解任が無効になるわけではありません。会社が主張する問題の内容、発生時期、会社への影響、他の役員との扱いの違いなどを合わせて確認することが重要です。

(3)他の役員との比較で著しく不公平ではないか

また、同じような行動や判断をしている他の役員がいるのに、自分だけが解任の対象とされていないでしょうか。

  • 同様のミスや評価の役員が複数いるのに、特定の一人だけが解任されている
  • 特定の株主や経営者との関係性だけを理由に、排除の対象になっている

といった事情がある場合は、公平性を欠く扱いといえる可能性があります。
こうした点も、不当解任かどうかを検討するうえで重要な材料になります。

証拠として残しておくべき書類・データ

不当解任の可能性を検討し、必要に応じて会社と話し合いや交渉を行うためには、「証拠」となる資料をきちんと残しておくことが非常に重要です。
ここでは、特に押さえておきたいものを確認していきます。

(1)会社から受け取った書類・メール

まずは、会社から受け取った書類やメールをまとめて保管しておきましょう。

  • 解任を知らせる通知や案内文
  • 辞任や合意退任を促す文書
  • 解任理由や問題点を説明した資料やメール

これらは、会社がどのような理由で、どのような説明をしてきたのかを示す重要な証拠です。
紙ベースの書類だけでなく、メールやチャットツールのメッセージも、可能な範囲で保存しておくことをおすすめします。

(2)会議や話し合いの内容が分かる資料

解任について議論された会議や面談があった場合、その内容を示す資料も大切です。

  • 会議の議事録
  • 会議の配布資料やスライド
  • 面談でのメモ(自分で取ったものでも構いません)

議事録などが会社側から共有されない場合でも、自分用のメモとして、

  • 日時
  • 出席者
  • どのような話が出たか
  • どのような発言や合意があったか

を簡単に記録しておくだけでも、後で思い出す際に大きな助けになります。

(3)日頃の業務や評価に関する資料

解任理由が「業務上の問題」や「能力不足」であるとされている場合には、日頃の業務や評価に関する資料も重要な証拠になります。

  • 業績報告書や営業成績の資料
  • 人事評価シートや面談記録
  • 他の役員や社員からのメール(感謝や評価のメッセージなど)

これらは、「本当に業務上の問題があったのか」「会社の主張と実際の評価が食い違っていないか」を検討するうえで役に立ちます。

解任決議を争うための法的な手段の全体像

解任の理由や手続きに大きな疑問がある場合には、「おかしい」と感じるだけでなく、必要に応じて法的な手段を検討することも選択肢となります。ここでは、代表的な枠組みを確認していきます。

まず、取締役の解任は通常、株主総会の決議によって行われます。この株主総会の解任決議そのものに手続き上の問題がある場合には、会社法上、次のような訴えを通じて決議の有効性を争うことが検討されます。

  • 株主総会決議の内容に取消事由があるときに、その取消しを求める訴え
  • 招集手続や議事運営に重大な瑕疵があるなど、決議がそもそも存在しない・無効といえる場合に、その不存在または無効の確認を求める訴え

これらはいずれも、会社法に定められた手続に従って提起する必要があります。特に、株主総会決議取消しの訴えは、原則として決議の日から3か月以内に提起しなければなりません。

「後からゆっくり考えればよい」と放置していると、手続上の問題を理由に決議取消しを求める機会を失ってしまうおそれがあります。

また、解任決議そのものを争わない場合でも、正当な理由のない任期途中の解任として損害賠償を請求するというアプローチもあります。この場合は、決議の効力そのものではなく、「解任の理由・経緯・手続き」と「生じた損害」との関係を中心に検討していくことになります。

どの手段を選ぶべきかは、

  • 手続き上の問題が中心なのか、理由の内容が中心なのか
  • 決議からどれくらい時間が経っているのか
  • 経済的に回復したい損失が何か

といった事情によって変わります。違和感を覚えた段階で、できるだけ早い時期に、自分のケースがどの枠組みに当てはまり得るのかを専門家と一緒に確認しておくことが重要です。

小さな違和感もメモしておくことが大切

不当解任かどうかを検討するうえでは、「法律的におかしいかどうか」だけでなく、当事者として感じた違和感も大事なヒントになります。

  • なぜこのタイミングだったのか
  • なぜ自分だけが対象になっているのか
  • なぜ具体的な説明を避けるのか

といった疑問があれば、その内容を簡単にメモしておくだけでも、後から状況を確認しやすくなります。

「なんとなくおかしい気がする」と感じたときこそ、
感情的に反応する前に、事実関係と証拠を一つずつ確認することが、不当解任への対応の第一歩になります。

不当に解任された・解任されそうな取締役(役員)の対処法

「すでに解任されてしまった方」「これから解任されそうだと感じている方」が、どのような順番で何をすべきかを、できるだけ具体的に紹介します。

解任を示唆された段階で行うべき最初に行う対応

まだ正式な解任までは至っていないものの、上司や社長、他の役員から「辞任してほしい」「役員から外れることを考えてほしい」といった話が出始めた段階で、取っておきたい対応があります。

(1)口頭だけで終わらせず、書面・メールで内容を残す

最初の段階では、次のように口頭で切り出されることが多いです。

  • 「そろそろ身の振り方を考えてほしい」
  • 「このままだと解任も検討せざるを得ない」
  • 「円満に辞任してくれると助かる」

このような話を聞いたとき、多くの方は驚きやショックで冷静に対応しにくくなりますが、ここで大切なのは、やり取りを記録に残すことです。

(2)その場で即答・即サインをしない

突然「辞任してほしい」と言われると、場の空気に押されて、「分かりました」とその場で答えてしまうことや辞任届や合意書にそのまま署名してしまうということも少なくありません。

しかし、一度辞任届や合意書にサインしてしまうと、後から「やっぱり撤回したい」と主張することは非常に難しくなります。

そのため、どれだけ強く求められても、「すぐには決められないので、持ち帰って検討したいです」と伝え、その場での即答・即サインは避けることをお考えください。

(3)感情的な反応を控え、記録と情報収集に集中する

理不尽なと感じる場面では、怒りや悔しさから相手に強く反論したくなるかもしれません。しかし、その場で感情的にぶつかってしまうと、不利な発言をしてしまい、後から問題になったり、「協調性がない」「話し合いができない」といった印象を与えてしまうといったリスクがあります。

「納得はできないが、いったん今日は持ち帰って確認します」といった姿勢で切り上げ、その後、落ち着いて事実関係や書類の内容を確認していくほうが、有利な対応につながりやすくなります。

解任決定がなされた直後にやるべきこと

すでに解任が決定した、あるいは決定が伝えられた段階では、「事実の確認」と「選択肢の把握」が重要になります。

(1)いつ、どのような内容で解任が決まったのか確認する

まずは、次のような点を確認してみてください。

  • 解任が決まった日(または通知を受けた日)はいつか
  • 誰から、どのような形(対面・メール・書面など)で伝えられたか
  • そのときに説明された解任理由は何だったか

可能であれば、その場でメモを取り、後から自分宛てにメールでまとめておくと、事実関係を忘れにくくなります。

(2)決定の根拠となる書類やメールを収集・保管する

次に、解任の決定や理由に関係しそうな書類やメールを集めておきます。

  • 解任通知書や案内文
  • 解任に関する社内メール
  • 会議資料や議事録のコピー

こうした資料は、後から不当解任かどうかを検討するうえでの重要な証拠になります。
紙の書類だけでなく、メールのスクリーンショットやフォルダ分けなども有効です。

(3)取り得る選択肢を大まかに把握する

解任が決定したとき、多くの方が

  • 会社に残るべきか
  • 和解・合意を目指すべきか
  • 損害賠償などの法的手続きも検討するべきか

といった点で悩まれます。

すぐに結論を出す必要はありませんが、

  • 不当解任の可能性があるのか
  • 損害賠償請求が現実的に見込めるのか
  • 会社との関係をどの程度維持したいのか

といった点を、早い段階で専門家と一緒に確認しておくことで、後になって「もっと早く動いておけばよかった」と後悔するリスクを減らすことができます。

いつ弁護士に相談すべきか?

最後に、「どのタイミングで弁護士へ相談したほうがよいか」という点について確認していきます。
結論からいうと、「少しでもおかしいと感じた時点」で相談していただくことをおすすめします

(1)解任を匂わされた段階で相談するメリット

まだ正式な話にはなっていなくても、

  • 「そろそろ身の振り方を考えてほしい」と言われた
  • 「取締役会であなたの進退が議題になるかもしれない」と示唆された

といった段階で相談いただくと、次のようなメリットがあります。

  • どのような発言・対応は避けるべきか、事前にアドバイスを受けられる
  • どの書類・メールを残しておくべきかが分かる
  • 将来の交渉に備えた「土台づくり」を、早い段階から進められる

最初の対応を誤らないことが、その後の有利・不利を大きく左右することがあります。

(2)解任直後・交渉前に相談するメリット

すでに解任が決まった、あるいは決定を知らされた段階でも、交渉に入る前に一度相談しておくことをおすすめします。

  • 解任の理由や手続きに問題があるかどうか
  • 損害賠償や退職慰労金(役員退職金)についてどの程度主張できそうか
  • 会社との交渉で、どこまで譲歩する余地があるのか

といった点について、第三者の目で確認してもらうことができます。

自分だけで交渉を進めてしまうと、「その場で言われるままの条件で合意してしまったが、後から考えると不利な内容だった」と後悔するケースも少なくありません。

(3)時間がたつことによる不利を避ける

時間がたつほど、関係者の記憶が薄れていく・メールや資料が廃棄される・会社との力関係が固定化してしまうといったデメリットが生じやすくなります。

「もう少し様子を見てから」と考えているうちに、取り得たはずの選択肢や証拠が失われてしまうこともありますので、少なくとも一度は早い段階で相談し、現時点での選択肢を把握しておくことが重要です。

会社側のリスクを踏まえて退任条件を協議する

会社側が役員解任を進める場合、解任する側にも手続き上・説明上のリスクが生じることがあります。解任された側としては、会社側を感情的に責めるのではなく、どのような点が法的な争点になり得るのかを確認したうえで、退任条件や損害賠償、退職慰労金について協議することが大切です。

ここでは、役員解任の場面で確認しておきたい3つの論点を見ていきます。

手続きの不備がないかを確認する

役員解任の有効性は、株主総会や取締役会の手続きが法令と定款に従って適切に行われたかどうかに左右されます。具体的にどの手続きをチェックすべきかは、前述の「手続き面のチェック(解任決定のプロセス)」で詳しく解説しています。

(1)手続きの不備があると決議が争われる

招集通知の発送が法定の期限よりも遅れていた、招集通知に「取締役の解任」が議題として明記されていなかった、取締役会の招集手続に問題があった、議事録の内容と実際の議事に食い違いがある、といった不備があると、株主総会決議の取消しの訴えを提起できる余地があります。

ただし、決議取消しの訴えには、原則として決議の日から3か月以内という期間制限があります。解任された側としては、手続きに疑問がある場合、できるだけ早く招集通知、議事録、登記事項証明書などを確認する必要があります。

解任決議が取り消されると、会社側にも次のような影響が生じる可能性があります。

  • 役員構成の見直し
  • 解任後の行為への影響
  • 損害賠償判断への影響

このような問題がある場合、会社側としても早期に紛争を解決したいと考えることがあります。そのため、手続き面の確認は、退任条件や損害賠償の協議を行ううえでも重要です。

(2)手続き上の問題点は協議材料になる

ご自身が解任された側として、招集通知の日付、議題の記載、議事録の内容、取締役会の決議内容などを丁寧に確認できれば、手続き上の問題点を把握できる可能性があります。

手続きに問題がある場合、会社側は決議を争われるリスクを考慮し、損害賠償や退職慰労金について協議に応じることがあります。会社から渡された書類は、すべてコピーを取り、日付や記載内容を確認してください。

対外的な説明内容を確認する

役員解任が外部に伝わると、取引先や金融機関、投資家、従業員、メディアといったさまざまな関係者に影響が及ぶことがあります。

(1)外部からの見え方が経営に影響する

役員解任が公になると、「経営陣の内部で対立が起きているのではないか」「経営体制が不安定なのではないか」と受け止められることがあります。その結果、次のような影響が生じる可能性があります。

  • 新規取引への影響
  • 追加融資への影響
  • 企業価値への影響
  • 従業員への影響

会社側にとっても、解任の経緯や理由をどのように社内外へ説明するかは重要な問題です。解任された側としても、今後のキャリアや取引先との関係を守るため、対外的な説明内容を確認しておく必要があります。

(2)退任発表の文言も協議対象になる

会社側は、解任の事実をできるだけ穏便に処理し、「円満退任」として説明したいと考えることがあります。一方で、解任された側にとっても、退任理由の説明が今後のキャリアに影響する可能性があります。

そのため、次のような点は退任条件とあわせて確認しておくことが大切です。

  • 退任発表の文言
  • 取引先への説明内容
  • 社内向けの説明内容
  • 引き継ぎや挨拶の方法
  • 競業避止に関する条件

損害賠償や退職慰労金だけでなく、対外的な説明内容も含めて協議することで、退任後の不利益を抑えられる可能性があります。

正当な理由の有無を確認する

任期途中の解任について、損害賠償の場面で「正当な理由」があったことを示す責任は、原則として会社側が負うと理解されています。

(1)会社側には具体的な説明と証拠が求められる

会社が「正当な理由があった」と主張するためには、次のような事実と証拠を示す必要があります。

  • 問題とされた行為
  • 発生した時期
  • 会社への影響
  • 注意や改善要求の有無
  • 他の役員との公平性

抽象的な「総合的に判断した」「信頼関係が失われた」といった説明だけでは、裁判所で正当な理由として認められにくい場合があります。会社側から示された解任理由が具体的かどうかは、損害賠償請求を検討するうえで重要な確認ポイントです。

(2)解任理由が具体的かどうかを確認する

会社側が、解任の理由として説明できる事実を十分に示していない場合、損害賠償請求や決議取消しの主張が争点になることがあります。

ご自身としては、会社から提示されている解任理由が抽象的であったり、過去に指導や警告を受けた記録がなかったり、他の役員には同じ基準が適用されていなかったりする場合、その点を確認したうえで協議に臨むことが大切です。

会社の説明をそのまま受け入れる前に、手続き、対外的な説明、正当な理由の有無を確認し、どのような対応が適切かを検討することをおすすめします。

会社との交渉は、解任理由や手続き、退任後の影響を踏まえて進める必要があります。当事務所では、不当解任を受けた役員側のお立場で、会社との協議方針を検討する段階からご支援します。

⇒⇒ 役員解任の交渉について相談する

解任後に押さえておきたい株式・競業避止・キャリアへの影響

役員解任は、解任そのものの有効性や損害賠償の問題だけでは終わりません。解任の前後には、保有する株式の処理、競業避止義務、今後のキャリアの方向性など、ご自身の将来に直結する論点が数多く絡んできます。

ここでは、解任の直接の場面では見落とされやすいものの、後になって大きな影響を持つ3つの論点を見ていきます。

保有株式の扱い

役員として在任中に、会社の株式を保有していた方は少なくありません。創業メンバーとして相当数の株式を持っている場合、ストックオプションを行使していた場合、従業員持株会から取得した場合など、保有形態はさまざまです。

(1)解任されても株式は自動的に失われない

役員の地位と株主としての地位は、法律上は別のものです。役員を解任されたからといって、保有する株式が自動的に会社に取り上げられることはありません。

会社から「退任にあたって株式を返してほしい」「持株を会社に売却してほしい」と求められた場合でも、ご自身に売却の意思がなければ、原則として応じる義務はありません。

ただし、

  • 株式の譲渡制限が定款で定められている場合
  • 株主間契約で「退任時に株式を売却する」と取り決めていた場合
  • ストックオプションの権利行使条件で「在任中であること」と定められていた場合

など、契約や定款の規定によっては、保有株式の処理について制約が及ぶ場合があります。

(2)会社側の買取提示は適正な価格か

会社から株式の買取りを提示された場合、必ず確認したいのは買取価格です。中小企業や非公開会社の株式には市場価格がありません。そのため、会社側からの提示価格が、本来の株式価値と比較してどの程度の水準なのかが見えにくい状況になりがちです。

  • 直近の決算書(純資産・利益)
  • 過去の株式売買事例
  • 配当の実績
  • 類似会社の評価倍率

などをもとに、ご自身が保有する株式の妥当な価値を確認したうえで、買取交渉に臨むことが大切です。

(3)少数株主としての権利を活用する選択肢もある

会社との関係が悪化した状況で、無理に株式を売却する必要はありません。少数株主であっても、

  • 株主総会での議決権の行使
  • 計算書類等の閲覧・謄写請求
  • 株主提案権の行使

といった権利を活用することで、会社の経営をモニタリングし続けることが可能です。場合によっては、株主としての立場を維持しながら、会社側に対し損害賠償請求などの法的手段を取ることもあります。

競業避止義務との関係

役員解任の場面では、「他社の役員に就任してほしくない」「同業で起業しないでほしい」と会社側から求められることがあります。

(1)取締役の競業避止義務は在任中の義務

会社法上、取締役は、在任中、自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をする場合、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を得る必要があります(会社法356条1項1号、365条1項)。これがいわゆる競業避止義務です。

この義務は、原則として取締役の地位にある間だけのものであり、解任や辞任、退任によって役員の地位を失った後は、当然には適用されません。

(2)退任後の競業避止は契約による

退任後にも競業避止義務を負わせるためには、会社と役員との間で、別途の合意(契約)が必要になります。

会社から提示される退任関係の書類(合意書、誓約書など)の中には、

  • 退任後一定期間の同業界への就職・関与の禁止
  • 退任後一定期間の取引先への営業の禁止
  • 退任後一定期間の従業員への引き抜き行為の禁止

といった条項が含まれていることがあります。

これらの条項は、ご自身の今後のキャリアに直接の影響を与えるため、署名する前に、次の点を確認してください。

  • 制限される業務範囲
  • 制限される地域
  • 制限される期間
  • 会社側の保護利益
  • 代償措置の有無

退任後の競業避止義務については、何年以内であれば必ず有効という一律の基準があるわけではありません。会社側に保護すべき利益があるか、制限される業務・地域・期間が広すぎないか、退職金の上乗せなどの代償措置があるかを総合的に見て判断されます。

あまりに広範な制限であれば、公序良俗違反として無効とされる余地があります。

キャリアへの影響をどう抑えるか

役員解任は、ご自身の今後のキャリアに対しても、見過ごせない影響を与えます。

(1)外向きの説明の仕方を取り決める

会社側との交渉の中で、解任の事実をどのように外部に説明するかを取り決めておくことが重要です。

  • 退任発表の文言(「一身上の都合により退任」など)
  • 退任理由を社内外に説明する際の方針
  • 取引先や顧客への引き継ぎの形

これらの取り決めがないと、解任の事実が予期しない形で業界内に広まり、次のキャリアに支障が出るおそれがあります。

(2)損害賠償・退職慰労金の交渉と一体で進める

退任後の対外的な説明、競業避止の範囲、保有株式の処理、退職慰労金の支払いといった条件は、損害賠償の交渉と一体で進めることで、ご自身に有利な条件をまとめて引き出せる可能性が高まります。

会社側から個別の論点ごとに少しずつ合意を求められると、全体の方針が定まらないまま、不利な条件を一つずつ受け入れてしまうことになりがちです。退任に関わる条件は、できるだけまとめて一度に協議することをお考えください。

(3)次のキャリアに進むための準備期間

役員としてのキャリアを継続される方も、独立や転職を検討される方も、退任から次のステップまでには一定の準備期間が必要になります。

  • 損害賠償・退職慰労金の請求
  • 保有株式の処理
  • 競業避止に関する合意の調整
  • 退任の対外的な公表

これらを並行して進めることになるため、当面の生活資金と相談時間を確保したうえで、専門家とともに対応方針を立てていくことが大切です。

よくある質問(Q&A)

Q. 役員の解任はいつでもできますか?

会社法上、取締役は株主総会決議によって「いつでも」解任できるとされています。ただし、正当な理由のない任期途中の解任には、損害賠償の問題が生じ得ます。

会社法上、取締役などの役員は、原則として会社法341条の要件を満たす株主総会決議によっていつでも解任することができるとされています(会社法339条1項)。これは、会社の経営を適切に行うために、株主が経営陣の人選を状況に応じて柔軟に見直せるようにするためのルールです。

ただし、任期途中で解任される役員の側から見ると、残りの任期分の役員報酬や、退職慰労金(役員退職金)への影響など、大きな不利益となります。そのため、正当な理由がないのに任期途中で解任した場合には、会社がその役員に対して損害賠償責任を負う可能性があります(会社法339条2項)。

「いつでも解任できる」ことと、「いつでも自由に解任して責任を負わなくてよい」ことは別の問題であることを押さえておくと、ご自身の対応方針を考えやすくなります。

Q. 役員を解任するとどうなりますか?

解任の手続きが成立すると、その役員は株主総会決議の時点で取締役の地位を失います。会社は原則として2週間以内に登記の変更を行い、解任された役員は残存任期分の役員報酬等について損害賠償を請求できる可能性があります。

役員の解任が株主総会の決議によって成立すると、解任された役員はその決議の時点で取締役(または監査役・会計参与)の地位を失います。

その後、会社側では、原則として変更の日から2週間以内に役員変更登記を行う必要があります(会社法915条1項)。登記が完了すると、現在事項証明書では、現在の取締役として表示されなくなります。

一方、履歴事項全部証明書には、解任や退任などの履歴が記載される場合があります。登記事項証明書を確認する際には、証明書の種類にも注意が必要です。

解任された役員側から見ると、

  • 残りの任期分の役員報酬を受け取れなくなる
  • 退職慰労金(役員退職金)の取扱いが問題になる
  • 保有株式の処理が問題になる
  • 競業避止や退任後のキャリアが問題になる

など、複数の論点が一度に発生します。正当な理由のない解任であれば、これらの不利益のうち損害賠償の対象となる部分について、会社に対し請求できる可能性があります。

Q. 解任と退任・辞任の違いは何ですか?

広い意味での「退任」は役員の地位を退くこと全般を指します。本記事では、任期満了退任、解任、辞任を区別して説明しています。

簡単にいうと、「任期どおりに終えるか」「途中で会社の判断で外されるか」「本人の意思で辞めるか」の違いです。

  • 任期満了退任:任期満了で退くこと
  • 解任:会社の判断で外されること
  • 辞任:本人の意思で退くこと

辞任は、実際の運用では辞任届を提出する形が多く用いられます。ただし、会社の承諾を受けて初めて成立するものではなく、辞任の意思表示が会社に到達したかどうかが重要になります。
注意が必要なのは、実際には会社から強い圧力を受けて退くことになったにもかかわらず、形式上は「辞任」「円満退任」とされているケースです。

このような場合、「本当に自分の自由な意思による辞任といえるのか」「実質的には解任と同じではないか」を慎重に検討する余地があります。会社から辞任を求められたときには、その場で辞任届にサインせず、一度持ち帰って検討することを強くおすすめします。

Q. 取締役は辞任できますか?

取締役は自分の意思で辞任できます。ただし、会社から辞任を求められている場合には、辞任の形を取ることで損害賠償請求が難しくなる可能性があるため注意が必要です。

取締役と会社との関係は、会社法上、委任に関する規定に従うものとされています。委任契約は、各当事者がいつでも解除できるのが原則です(民法651条1項)。

したがって、取締役はご自身の意思で辞任することができます。実際の運用では辞任届を会社に提出する形が多く用いられますが、辞任は会社の承諾によって初めて成立するものではありません。

ただし、辞任した場合には、次の点に注意が必要です。

  • 本人の意思による退任と扱われやすい
  • 損害賠償請求が難しくなる
  • 権利義務が残る場合がある

辞任の形を取ると、退任の理由が「本人の意思」と評価されやすくなります。そのため、解任の場合のように会社法339条2項に基づく損害賠償を主張することが難しくなる可能性があります。

また、辞任によって法律または定款で定めた役員の員数を欠く場合には、後任者が就任するまで、取締役としての権利義務が残ることがあります(会社法346条1項)。

会社から「解任ではなく辞任にしてほしい」と求められているケースでは、辞任の形にすることで、損害賠償を請求する余地を自ら手放してしまう可能性があります。辞任届を出すかどうかは、ご自身の状況を踏まえて慎重に判断することが大切です。

Q. 役員解任で退職慰労金(役員退職金)は必ずもらえますか?

「必ずもらえる」とまではいえません。会社の規程や決議の内容、解任の理由によって、支給の有無や金額が問題になることがあります。

退職慰労金(役員退職金)は、定款、株主総会決議、取締役会決議などにより、その有無や金額の決め方が定められていることが多いです。

一般的には、在任期間や会社への貢献度を踏まえて支給されますが、不祥事や重大な義務違反があると主張されている場合や、「解任だから退職慰労金(役員退職金)は出せない」という説明がされている場合などには、会社が退職慰労金(役員退職金)の減額や不支給を主張してくることもあります。

もっとも、会社が「不支給」と言っているからといって、必ずしもそれが妥当とは限りません。

  • 本当に重大な不祥事といえるのか
  • 退職慰労金を全額カットするほどの事情があるのか
  • 規程や過去の支給実績とのバランスはどうか

といった点を踏まえて、退職慰労金の扱いが適切かどうかを検討する余地があるケースも多くあります。退職慰労金の問題は、将来の生活に直結する重要な部分ですので、会社の説明に疑問がある場合には、一度専門家に内容を見てもらうことをおすすめします。

取締役・役員解任で悩んだらご相談ください

取締役・役員は法律上「いつでも解任できる」一方で、正当な理由のない任期途中の解任については、会社に損害賠償責任が生じる可能性があります。形式上の「退任」「辞任」でも、実質は解任に近い扱いとなっているケースも少なくありません。

「おかしいかもしれない」と感じたら、

  • 解任に至る経緯・理由・やり取りをメモと資料で記録する
  • 辞任届や合意書に安易にサインしない
  • 早めに専門の弁護士へ相談する

の3点を意識していただくことが重要です。

取締役・役員の解任トラブルは、会社法だけでなく、退職慰労金や株式、今後のキャリアなどが絡む、複雑で精神的負担も大きい問題です。

弁護士法人M&A総合法律事務所は、会社から不当解任・強制的な辞任の扱いを受けた役員側の支援に力を入れており、解任理由や手続きの妥当性、損害賠償・退職慰労金の可能性などを確認しながら、会社との交渉方針を一緒に検討します。

早い段階で相談することで、残すべき証拠や避けるべき対応が分かり、不利な条件での「泣き寝入り」を防ぎやすくなります。

初回相談は無料です。電話・メールのいずれの方法でもご相談を受け付けています。

弁護士費用の詳細は、弁護士費用のページでご案内しています。ご相談の流れについては、ご相談の流れのページをご覧ください。

——————

本記事で紹介している内容は、執筆時点の法令や通達等を前提とした一般的な情報提供であり、個別の事件についての法的助言や税務アドバイスではありません。実際に役員解任・損害賠償・退職慰労金の問題に直面された場合には、必ず最新の法令や具体的な事情を踏まえて、弁護士などの専門家に相談したうえで判断してください。